俺の許嫁にはナゼか兄がいた。
彼視点
ラッキーだったなー!
なんでか、桐月ハルがうちのグラウンド見に来てくれてたお陰で、雪華と連絡とれることになったし、風邪だったってのもわかったし。
俺は9組で雪華とは超遠い。
来年のクラス替えに期待するとして、とにかくすぐ帰ったらお母さんに雪華見つけたって報告して、ハルから教わった番号にかけた。
「はい、もしもし……もしかしてゆうちゃん?」
「おー!雪華!!ちょー心配した、いないからどーしたのかと思ってさーー!こんなことならこないだ会ったとき聞いときゃよかったな!」
「あの……ゆうちゃん、私の許嫁って、そのーーいい、の?」
「だって、俺、雪華のお母さんと病院で約束したんだぜ!俺が一生かけて家族になるから安心してくれって!」
「ゆうちゃんが!!??」
「うん」
あ、やべー。忘れてた。
雪華には高校入ってから弁護士さんが遺言状届けるんだもんなー。
俺だけが知ってたの、早めに言ったほうが良かったのか?
「……学校、私にあわせたって……」
「まあ、それもあるし、うちって宇井野からチャリ5分なんだ。じいちゃん緊急入院したりしたし、宇井野にいればうちで何かあったときも分かるから。それに別に野球出来ればどこでもよかったしな」
あ、もしかして、俺の進路が自分のせいとか思ったのか?
「んーーー、俺は約束したのもあったけど、ちゃんと幸せにしよーって思ってたんだよね。でも今の家族も大事だから宇井野にしよーってしただけで、雪華に責任ねえよ?だって俺が不安なの嫌なだけだし」
「ありがとう……でも、その、許嫁とか急でびっくりしてて」
「そっかー、イキナシだったもんな」
「それで……ね、その、学校ではなるべく秘密にしたいなぁ……っていうのは駄目かな……?クラスの様子とかわからないし、いえるような空気ならいいんだけど……」
え。なんで。事実なんだから言ってもいんじゃね?
俺は牽制かねて、言っちゃいたいけどなー。
まーでも、噂とか、女子って気にするもんなー。
まあ、秘密でもなんでも俺が許嫁なわけだし。
「俺が許嫁なの嫌!とか思ってる?」
「え……!ううん、そのーーそういうわけじゃないんだけど、なんというか未だ実感ないし……からかわれたりとか恥ずかしいなあって……」
「そっか、それならいーや。じゃあ言わね。でもハルから家に遊びにこいって言われたのは行ってもいいんだよな?」
「うん、それは。全然平気」
なるほどー。
まあ、入学式でれなかったもんな。
とにかく、声聞けてよかった。
これからは、試合とか練習じゃなくっても顔が見れるんだ。
今までの分、俺は挽回してやんだもんね。
「うちにもこいよ!近いからいつでも連れてっちゃる!!」
「うん」
ゴールデンウィーク前には合宿だって監督言ってたもんな。
なるべく休み時間、雪華に会いにいこっと。
電話切って、俺は楽しくなってきた。
明日っから弁当二つもって早弁したあと昼休みは雪華のクラスで食おーっと!!!
「おかーーーさん、明日から弁当二つにしてーー!!」
言ってから、気が付いた。
雪華にはお母さんがいないんだ。
俺はお葬式だって出て、お見舞いまで行って知ってたはずなのに、雪華はこうやってお弁当頼む相手がいないんだって気が付いた。
今頃現実的に、思いしる。俺は馬鹿だ。
雪華のお父さんは出張多いから留守が多いってハルに聞いたことがある。
普段、どうしてきたんだろ。
家の中で寂しくなかったか?
俺は遺言待たずに、もっと早くに駆けつければよかった。
比べるなんて間違ってる。
でも、俺はこうやって簡単にオベント頼めて、雪華はきっと自分でどうにかしてるんだよ。
同情とかじゃなくって、俺は、あの誓いは本気で。
ずっと応援席にいる、雪華がずうっと気になってて。
それは約束したあとも、する前も同じで。
幸せって難しいから、だからこそ全力でやらないと出来ないことだって思ってる。
「普通」ってむずかしい。「普通」が「幸せ」って、大変なことなんだよ。
ただ、好きじゃ駄目なんだ。
んーーー!!!!ムズい!!
とにかく寝て、起きて、練習出て、授業ーー!
やっぱ何がいいってこの学校、私服なのがいいんだよな。
中学ンときのシャツとかそのまま使えるしなー。
って、全然背が伸びてねえってことか!くそぉ。
学校に登校して朝練をこなす。
同じ野球部に入部した浅井も大瀧も同じクラスだった。
一緒に早弁してから二人とも昼休みには爆睡してた。
俺は眠いけど腹も減ってて、そんでもって雪華と一緒に食うことしか考えてなかったから、弁当もって走ってたら、何故か弁当持ってる安達と出くわした。
「あれ?安達ってこのクラスか?」
「ちげーわ。5組だけど。こっちには妹いンだよ。あぁ、小櫻、妹のことはイチオーよろしくな。嫌な目にあわせたらぶん殴る、つーか殺す」
「えー?」
安達の妹?安達って双子なのかよ?なんで俺が安達の妹をよろしくされンの?
そんで殺害ヨコクされんの?俺は雪華がいんだけど。
意味わかんね。
ボーイズの練習以来に見る雪華を見つけて、雪華の机に俺の二回目の弁当を置くと、安達もなんでか安達の弁当を置いた。
……ん?
「雪華な、俺の家の隣で幼馴染なんだよ。妹、つうか妹みてーなもんだけどな」
安達の妹って言ってたのが、雪華!?
え、じゃあ、昨日桐月ハルが見に来てたのって偶然じゃなく、安達を見にきてたのか!?
「……ゆうちゃん?」
雪華に首をかしげて見つめられたから、俺はそこらのあいてる椅子を勝手に借りて座った。
安達が広げる弁当の中身と、雪華の弁当の中身。
量はちがうけど、アキラカ同じ。
……もしかして、安達の家とずっと繋がってて、俺が心配してた、家でハルと二人きりってわけじゃなくって。
ずっと、雪華の傍には安達がいたのか……?
……なんか、俺、嫌なやつ。
すっげぇヤなやつ。
ほんとは喜ぶとこじゃん、二人でお父さん待ってるよか、気にしてくれてる人たちがいたってすげーいいことじゃん。
なのに、すっげー悔しい。
安達がフツーに雪華とおんなじ弁当広げて、しかも「今日のもうまいな」って当たり前に雪華の頭とかフツーに撫でてるのとか。
安達は、よろしくなって言ったんだ。俺のこと認めて知ってるはずだ。
なのに、俺はすっげー悔しくて、嫌な気分で。
「おお安達、やっぱきたかーーーって、小櫻くん?小櫻くんまで桐月ちゃんとこでどーしたの?」
「おお、中野じゃん!!おまえここ?」
「うん、そう。小櫻くんはは9組じゃなかったっけ?」
「そーだよ!!浅井と大瀧は今寝てるー!」
「あはは、そっかぁ。練習きつかったからね、部活で軟球やってたやつらにはキツイのかも。あ、安達ー、ココではあんまイチャイチャするなよー。ほんと中学で目だってたんだから」
「いちゃいちゃってなんだよ!!俺はこいつの兄貴なんだよ。なにもしてねーし」
「またまたーー!同中じゃ、安達と桐月ちゃん付き合ってんのみんな知ってんだから、今更なーにいってんだか」
……つき、あってるーーーー。
「ゆうちゃん、あの、コウは兄代わりで、ずっと一緒で。その、噂はされてるけど全然そういうのじゃないからね」
「まあ、俺は兄だからな。いちおとはいえ小櫻によろしく、なんてほんとはまず遺言なくてもいわねえっての」
中野が他で弁当食いに去ってから、雪華と安達がそう言ったけど。
俺は、雪華のお母さんに守るんだって、幸せにするからって約束してたのに、俺が遅れた分、安達にもってかれた。
……もってたわけじゃない、隣で、気があって、兄とか妹って自分たちで言ってて。
そんでもってハルや雪華は、許嫁が俺でいいっ言ってくれてんのに。
安達の真意はまだよくわかんねーけど。
同じ中学の中野は噂しか知らなくて。
でも、こうやって普通に傍にいて、そうやって触れてて、弁当一緒で、それってそういわれてもしょうがないってことじゃん。
そんな周囲のセカイが何をいっても、安達も雪華も「兄妹」のセカイで生きてる。
なんか、それがすっげー悔しい!!
周りになんて言われようと平気で二人の「セカイ」で生きているのが、悔しい。
俺が許嫁なのに。
俺はずーっと好きで、幸せにするんだって思ってたのに。
なんだか、同じ学校になって近づいたはずなのに、急に雪華が遠いみたいな気分になる。
安達はそんな気ないかもだけど、こうやって俺がずっと守ってたんだぜ、ってみせつけられたみたい。
チビの俺の前に、デッカく見える安達いて。
……切り替える。
これからは、「兄」の安達含めて、俺がもっと大きくなればいい。
絶対に、雪華を支えるその土台に
俺は、なるんだ。
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とうとう3人セット。途中で区切ってたんですが、もういいか。一気に彼の視点で。次回はヒロインターンです。
早く裏のテーマに入りたい。彼は簡単に諦めない(というかそれだと作品オワル)ので、徐々に彼のよさを出していければな、と。