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与えられた手のひら

彼女の視点

「コウには、この話ーーーしないで?多分・・・騒ぎになるし」


「うん、だろうと思った。安達には俺に任しとけって言ってある。だからしばらく距離とらせるし、弁当は自分のクラスで食わせるぞ」



 もう、そこまで話がついて?



 コウが、ハルはさておいて学校であたしのこと任せたことなんか、なかった。


 こんな短期間で、二人はどういう会話したんだろう。



「あたし、自分に負けないようにする。でもーーーあたし、弱いから、逃げようとするかも。だから……こうやって逃げようとしたらーー手、掴んでて?」



 思わず、手を握ってて、なんていいそうになった自分が恥ずかしくて、言い直した。



 そんなあたしにーーゆうちゃんは、大きな目をあたしに向けながらしっかり頷いた。




「おし、しっかり俺が握っててやるから。俺が、守る」



 もう、言い直したのに、はっきり言うし……。



 でも、心強い。



 ”区別”されることは初めてじゃない。


 でも、侮蔑のような”区別”に、あたしはすごく傷ついて。



 立ち上がるために横から差し出された、その手は大きくて。


 すごく、あたたかい。



「俺はねー雪華が三回回ってワンと言えといってもやるね!どーんなワガママでも叶えるかんな!!」



 ゆうちゃん、それは、ワガママじゃなく嫌がらせでは……?



 でも、そんな発言含めてゆうちゃんらしい。


 思わず笑うと、ゆうちゃんも声を出して笑った。



 昔からよく聞いた、聞いてるとくすぐったくなるその笑い声。誰でも元気にさせちゃうよね。



「ゆうちゃんーーーーありがとう!」



 その背中に抱きつくと、ゆうちゃんはらしからぬ変な声をあげた。



「ご、ごめん。どっか痛くした?なんか捻った!?もしかして怪我とかーーって、ゆうちゃん、その、顔……」



「わーーー見んなぁーーー!!!!フイウチ!!いきなしそんなことされたら、すっげードキっとしただろ!!やっべぇ、超恥ずかしいけど超嬉しい」



 あたしの知ってるゆうちゃんは、元気な顔。


 笑ってる顔。たまに悔しがってる顔。


 全部知ってる。


 けど、こんなに顔を真っ赤にして照れている顔は初めて見た。


 9回ツーアウトでも、顔色なんか変えない心臓の持ち主が、余裕ナシのこんな顔。



 そっちこそーーーー反則だよ。



「よーーし、恥ずかしいけど超きもちかった!もっかい、もっかい!!」


「もういいよーーー!!!こっちのが恥ずかしい!!!」



 ゆうちゃんの手をすり抜けて、廊下を走って逃げているとすぐに後ろから捕まって、またあたしは笑い出してしまう。



「おお!今かすかに触れたのは……もしやムネか!?」


「バカーーーー!恥ずかしい、信じられない!!言わないでよーー!!」



 あ。



 ボトン、と野球道具と中学のバックを玄関で落したハルと目があった。


 そして弟は見事な敬礼。



「あ、しつれーしました。俺は隣いくんで、どーぞそのまま!!ガバッといっちゃってください、小櫻さん!」


「キャアアーーー!!ちょっと、ハル!!なにいってんの、止めてーーー!!」


「とーーーぜん、止めるに決まってんだろ、小櫻ァァ!!」



 ハルを押しのけて現れたこのドスのきいた、紛れもない低音ボイスは……。


 コウ……だ。



 久々に見た、兄コウ最凶バージョン。凶悪顔マックス。



「てンめーー学校では任したつったけど、ンなことまで俺は許可してねーーぞ!どさくさまぎれて俺の可愛い妹の、む、胸だと……!?なんつーーことしてくれてんだ、てめーはよ!!」


「責任取るんだから、いいじゃんーー!つか、ほんとマジ超ちょぴっとだったし!!」


「ゆるさねぇぇぇぇ!!!!!殺す!てめぇはやっぱ害虫だー!!」



 どっかん、バッタン、凄い音を立ててゆうちゃんたちがコウの家のほうへ転がっていくのを聞いて、弟のハルが笑った。



「すっげ、さすが小櫻さん。ねーちゃんのでっかい声、ひさびさ聞いた。なんかーーーマジ、よかったよ。コウにいもすっげ落ち込んでたし」



「----うん」




 だよね、さすがあの名門の四番。



 あたしは、この貰った勇気を、これから貰う勇気を。



 握り締めて、前へ進まないといけない。

次回は彼のターン。甘い、のか?これは。(自問自答)

もしかして触っちゃった!?(恥)というキャラではないので、思ったことを盛大に発言していく彼です。

コウ、おすわりよ。多分小櫻ファンのハルが鎖で繋いだと思いますが、番犬ごときでへこたれないのが彼です。

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