すずかぜクラス ラジオの5月
「ささ、始まりますよ!」
「え、何?」
「何と言われたら、あれですよ!私が卒業までにやりたいことですよ!」
「…ほえ。確かに、ゴールデンウィークを終えてすぐのホームルーム後にそんなこと言われていたけれど」
「だから、結さん!やりますよ!」
「まあ、千歩譲って私がやるのは良いとして、席となりだし。でも、なんで今なの?授業中なの?」
「良いじゃないですか、どうせ暇ですよね?」
「どうせ、授業中は寝ているからいいけど。でも、そんな言い方されたらさすがに傷つく」
「ああ、それはすみません。では、準備は良いですか?」
「え、ああ」
「茶畑いろはと?」
「うん?ああ、羽黒結の?」
「いきなりラジオ!!」
「はあ⁈これ、ラジオにすんの?手紙回しているだけだよね?レポート用紙切り取ってやり取りしているだけだよね⁈」
「まあ、まあいいじゃないですか」
「良かねえだろう!聞いたことないよ、文書でのラジオって」
「おいおい、目的は言いますから」
「…うーん。それで納得しろっていう方が難しいと思うけれど」
「では、趣旨を話しますね。ええ、茶畑いろはとクラスメイトのいきなりラジオとは、名前の通り、何の予告もなく、何の予兆もなく、出演者にも知らせず、気が向いたときに気の向くままにお送りする、ラジオ番組なのだ!」
「…もういいや、そういうことで」
「では、さっそくお手紙が来ております」
『じゃあ、羽黒!このページ読め』
『…はい。…よって、この命題は偽である』
『はい、ありがとう』
「おおと、いきなりの先生からの指名ですが、見事かいくぐりましたね。でも、教科書を見ていなかったように思うんですけど、よく分かりましたね」
「え?大体の理由は年長者である君の方にあると思うんだけど…。簡単に言うなら、今日の授業は第4単元の4時間目、それの序盤だから、大体この辺のページなんだよ」
「…へえ、それはもう常人ではないですね」
「まあ、それがG-1クラスに呼ばれた所以だからな」
「あ、手紙の内容と被っちゃいました!手紙では、どうしてあなたはG-1クラスに呼ばれたのかっていうことだったので、所以は言えんっていうダジャレを言ってもらおうと思ったのに」
「…いろはさんって、文字になった途端饒舌ですね」
「え、そ、そうかな」
「何照れてんですか、別に褒めていないんですけれど」
「ま、まあ気を取り直して。続いては、2年3組の田制敬亜さんからのお便りです」
「何を、どう切り替えるのかと思ったら、ラジオに戻るんですね。というか、このラジオどうやって視聴するんですか」
「僕は、同じクラスの子が好きです。でも、告白の仕方が分かりません。やっぱり男らしく行った方が良いのでしょうか。また、言葉などを教えて頂けるとありがたいです」
「無視ですか。というか、人選ミスってますよね?」
「確かに、茶わん蒸しみたいな手紙でしたね」
「茶碗蒸しみたいな手紙って何ですか⁈」
「新鮮ですよね、この表現。心温まるということです」
「だったらそれで良いでしょ…新鮮というか、斬新だよ」
「慢心していると、すぐ置いていきますよ?」
「慢心せずとも、追いついていませんよ?」
「ほう、もうすでに満身創痍だと?」
「感性の相違がひどすぎるって」
「あ、そうやってカンセイジョークにもっていっても、もう閑静ですよ?」
「持っていく気なんてさらさら無かったんだけど…」
「じゃあ、この手紙に対する答えをお願いします」
「…はあ。じゃあ、答えますけど。本当に満身創痍になってきましたけど、総力をふるって、総意になるような回答をしますね」
「解凍してくれるんですね?」
「凍らしていないんだけど。…まあ、証明するときもそうだけど、端的に結論を言えばいいんじゃないかな?」
「たとえば?」
「ええと、好きです。付き合ってください。みたいな?」
「だいたいそういうことを言って、代替案を出さないんですよね」
「ケチ付けるんだったら、いろはさん、何か言ってみてくださいよ」
「私だったら、何も言わずにすぐにチューしますよ」
「…やっぱり価値観が違いすぎる」
「かけ違いが起きてますかね?っていうところでお時間です」
「お時間なの?」
「お相手は、稀代のシルバーコレクターこと茶畑いろはと?」
「え、え?これ読むの?…GodNotesこと羽黒結でした」
「明日は、どんな話が聞けるかな?」
『何だったんですか、これ?』
『私の弟に送る、手紙だよ』
『ふうん』




