すずかぜクラス 出会いの4月
「君には、重要な任務を任せたいと思う」
本来私は、暴動の主犯格であるので、処罰を受けるつもりだった。それはもう、受ける気満々で、むしろこれで生涯を終えるのだからやってしまえと言う気持ちで言いだしたことである。
しかしながら、十六夜さんや茉釣さんの活躍もあって、結局私は本都での仕事を条件に、そして能力を駆使しないことを条件に、生き残ることになった。
もともと、人に何かを教えるということ自体は嫌いではないし、むしろ積極的にしたいくらいだったので、私がやってもいいのか、さすがにわがままを言ってしまいいてるのではないかと危惧していたけれど、私の脳を高く評価してくれた十六夜さんによると
「十六夜は、あなたの脳が出陽国に必要だと思います。何かあれば、私が彼をぼこぼこにします」
ということだそう。
総理大臣をぼこぼこにできる立場だということに驚きだけど、彼女と話している限り、割かし嘘でもなさそうなのだ。
「じゃあ、来月の4月から、G-1クラスの担任をお願いしますね」
「じ、G-1?」
「ああ、説明まだでしたっけ?G-1クラスとは、ジーニアス、つまり天才が集うクラスなのです。彼ら彼女らは、非常に卓越した能力を持っていて、常人では扱いにくいのです」
「なるほど…」
「それで、あなたのような天才を推したんです。十六夜的にも適任だと思いますよ?」
「そういうことか…」
「あ、一つ特殊なお仕事なんですけど」
「うん?」
「先述の通り、超越した能力を持つ彼ら彼女らは、神怪の一歩手前です」
「おお、確かに」
「そこで、卒業と同時に選択してもらわないといけないのです」
「と言いますと?」
「神怪となって、人間としての人生を消滅させ、この世と一体化するか。
人間となって、神怪とのかかわりを一切なくし、少しの天才に戻るか。ということです」
「ふうん。でも、それって神怪になる方ってあんまりメリット無くない?私が言うのもなんだけど、神怪だからできたことも少なからずあるんだよ?例えば、友達が出来たりとか」
「もちろん。どちらにも、しっかりとメリットデメリットは用意しています」
「聞かせてよ」
「神怪となれば、今までの家族の記憶は、全て無くなります。というか、自分の存在が、非存在になるのでそもそも認識されていないことになります」
「私も、妹には非存在として扱われているし。書き換わるっていうことか」
「人間となれば、これからの、つまりはG-1クラスでの記憶が、全て無くなります。つまりは、ただ勉強をした学生生活という記憶になるのです」
「ほほう」
「家族をとるか、友達をとるのかということですね」
「そりゃ厳しい選択だ」
「あくまでも、その人の意思次第ですけれど」
「なるほど。ありがとう。じゃあ、やってみるよ」
「健闘を祈ります!」
そんな感じで引き受けたG-1クラスは、初っ端から波乱万丈だったなぁ。
桜の花びらがひらひらと舞い、新入生の緊張感がひしひしと伝わり、私まで緊張してしまうような、そんな日。4月11日。私の人間時代の誕生日だなんて思い出しつつ、名簿をそっと閉じ、教室へと向かった。
ガラガラとゆっくり、しかし力強くドアを開けると、すでに彼女たちは座っていた。しかも、姿勢正しくこちらをしっかりと見ているので、「こんなに真面目なのか今の子たちは」なんて思ってしまった。しかし、そんな心の声は、すぐに掻き消されてしまった。
「痛っ!」
ドアのぎりぎりに熊出のような者が用意されており、踏めば持ち手がおでこに激突するという、べた中のべたであるいたずらに、見事引っかかったのだ。
「あははははっ!先生、面白!」
「久々に心に響く面白さです」
「どう?私の理論、正しかったでしょ⁈」
「まさか、ほんとに引っかかってくれりゅとは!」
「17世紀のバラエティではないのですから、ははっ」
「せ、先生、大丈夫ですか⁈…ふふっ」
「お、お前ら!」
「どうせ、緊張しているんだろうから脅かしてやろうと思ったのよ。ね、彩智」
「ね、千歳ちゃん。どうです、緊張ほぐれましたか?」
「緊張は切れたけど、その分堪忍袋の緒が切れそうだよ」
「あ、さすがダジャレを入れてくるなんて!」
「そんなのダジャレって言わねえよ、赤根」
「怒られちった!」
なんだかんだで、緊張はほぐれたので、気を取り直して挨拶だ。
「じゃあ、今年から担任を務める、涼風羽天だ、宜しく」
「よろしくお願いします!」
「おお、声がそろっていい挨拶だな」
これからの学校生活に希望を見据え、とりあえずは仕事のことを忘れ、この1年間を大切に生きようと思った。彼女たちなら、楽しくやれるはずだ。




