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神怪だって、人間です!!  作者: サツマイモ
神怪・新章突入篇
90/140

いてくもポゼッション 嫉妬の水。

…待ってください。確かに私は彼女にお願いをしました。しかしながら、どうでしょうか。氷結さんは、今日お休みのはずでは?

「あ、あの今日お休みですよね?」

「それくらい知っているわよ、同じクラスだし。行くのよ、家に」

「は、はあ」


「もしかして、彼女の家を知らないとでも思っていたの?言っておくけれど、私とひゆは幼馴染なの」

「…そうだったんですか」


幼馴染ということは、程度こそあるにせよ、仲良しだった時期がこの二人にもあったということなのでしょう。それを知ると、なお一層この状況には疑問を抱かざるを得ないです。


「いつから仲が悪くなってしまったんですか?」

「知らないわよ、そんなの。気づいたら疎遠になっていたし、クラスも変わってから話さなかったし」

「その、クラスが変わったのって具体的にはいつですか?」

「え?ええと、中学3年生の時かな?」


昔の日本国での教育にだいぶ感化されている本都での学生生活は、3歳から始まります。

3歳から6歳までの初等教育(幼学校)、6歳から12歳までの次等教育(小学校)、12歳から18歳までの中等教育(中学校)、18歳から24歳までの高等教育(大学校)となっています。これに関しては、羽天さんから教わったというよりは、基礎知識として知っていました。それくらい本都の教育は徹底しており、8部門ある通称学問オリンピックでは、4部門で3連覇、その他でも最多優勝を誇るようです。


「今、中学校の5年生ですよね?」

「ええ、まあ」

ということは、この2年間の間に、何かしらの事件があったと考えるのが妥当かもしれません。


「まあ、でも彼女なりの葛藤があるんじゃないの?ぶつけられている身としては、あんまり嬉しい物じゃないけど。むしろ、たまったもんじゃないよね」


「そうですよね…ん?あれ、なんか聞いていた話と違うんですけれど」

「聞いていた話?」

「聞いた話では、失礼ですが、あなたつまりは環さんが氷結さんを苛めているとか」

「ふん、何その戯言。神様のくせに、そんなこと信じているの?」

「神様も、万全ではないんですよ。私達が作ったわけじゃないですし」

「…ふうん。じゃあ、その勘違いは撤回してもらってもいい?」

「分かりました」


神様と言えど、私達は創世者ではありませんから、言ってしまえば派遣社員みたいなものですからね。


しかし、ここまで違ってくると、いささかこんがらがってしまいます。もしかして、彼女は今までにない神怪、またはそれ以上の悪的存在なんじゃ…


「ねえ、少し気になったんだけど、精神疾患とか、心情とかって神怪の一種だったりするの?なんて言うのかな、実態はないんだけれど、それ自体みたいな。…例えば、鬱とか嫉妬心とか」

「あんまり、そう言うのは聞いたことがないですけれど」

でも、突き詰めてしまえば、そういうこともあるかもしれません。


「神怪にも、良い存在と悪い存在がいるというのは、確かです」

「そっか、なら氷結は悪い存在なんだろうね」

「まだ決まったわけではないですけれど」


「もし、悪い存在だったら、どうするの?」

「まあ、できる限りの対処をして抑制への道を歩ませますが、それでもだめだった場合は消滅の儀をしなければなりません」

「消滅の儀?」

「歴代、私の地元の島長が使うと言われている消滅の儀です。今は、神那さんという人がその能力を持っています」

「そっか、でも消されちゃうのは少し嫌かな」

「そうならないよう、精一杯努力します」

「ありがとう、神様」

「まだ仕事はしていませんけれどね」

「じゃあ、行こうか」


向かった彼女の家は、大きすぎず小さすぎない、丁度いいサイズで年頃の女の子には住みやすそうな家でした。一つ特徴を言うのなら、昔の日本の家のようでしたね。でも、庭園があるわけではないですけど。


「ここが、お家なんですか?」

「そうだよ、よくここで遊んだものだわ」


ピンポーン

「は、はーい。あ、泉咲さん」

「どうも」

「あ…たまちゃん」

「ねえ、ひーちゃん」

「な、なに?」

「一緒に茶道部に入らない?」

…いきなり⁈


「…何であんたなんかと一緒に茶道部に入らなきゃいけないの?」

「また、仲直りしたいのよ」

「…あなたの所為でこうなったわけじゃないの」

「…どういうことですか、氷結さん」

「私の所為なの」


いったい何を言っているのかさっぱりでしたけれど、その瞳を見る限りそれは彼女自身の言葉で、憑依して言わされているわけではないようです。


「…どういうことよ」

「私の、心が、いけないの」

「は、はあ?」

「あなたに、嫉妬していたから。友達多いたまちゃんに」


「何それ、悲劇のヒロインみたいな」

「ごめんなさい」

「あんなに散々言っておいて」

「ごめんなさい」

「あそこまで傷つけておいて」

「そろそろやめた方が…環さん」

「たったそんな事なの⁈」


「…へ?」

「あ、あれ?」


「たったそれだけなら、別に気にしないのに。してよ、嫉妬を。それくらい、私のことを考えてくれてるんでしょ?」

…おっと、これはどういうことでしょうか?


「え、え?」

「だーかーら、一緒に茶道しよ、ね?一緒にやってリラックスしましょ?」

…読めないなあ、人間って。


「いいの?」

「いいに決まってるじゃん!」


嬉しそうな氷結さんと環さんを見る限り、一段落ついたようですけれど、いったい何が起こっているのかよく分かりません。神様よりも、人間の方が複雑ってことですかね。


「無視ほどつらいものはないってことよ」

彼女は、そう言ってお辞儀をした。

私は結局何もできなかったけれど。


「そんなことありません。あなたのおかげでたまちゃんと仲直りできたわけですから」

どうやら、ずっと想うということは、人間にとって大切なことの一つのようです。


報告書書かなきゃ。


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