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神怪だって、人間です!!  作者: サツマイモ
神怪・新章突入篇
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いてくもポゼッション 憑依の水。

 辛巳乙未のその後の頑張りは、私水神泉咲が責任を持って見守らせてもらっています。水神神社の分家ですね。私も、人間年齢で11歳ですから。独り立ちするには、色々な言語を覚えなくてはいけませんからね。偏った勉強ではだめだと教わりましたから。

先生は、もちろん羽天さんです。教師になる前の予行演習として、やってもらいましたが、もう分かる分かる。素晴らしい先生になりそうですよ。


 ともあれ、辛巳乙未さんのお父様とお母様は、神那ちゃんのアイデアには少し反対していました。なにせ、今までの行為を肯定しなければならないわけでありますし、その行為に問題があったわけで、だからこそこんな事件になったので、やはりそこは反対せざるを得ないでしょう。


 しかしながら、両親は最終的にはしぶしぶOKを出したそうです。


 そんな彼女は、私の元へやってきました。

「この商売、うまくいきますように」

「分かりました」

「…え、神社が喋った?」

「いやいや違います。私はここの神社の」

「ああ、そうなの!」

「な、納得したんですか?」

「まあね、疑っても意味がないし」

 良い時代になりましたね。まあ、彼女なりの人生観なのでしょうけれど。

「そうですか」


「じゃあ、あの儀式ってやつやってよ」

「…え?いや、人様に見せるものでもないし」

「いいから、いいから。何だっけ、七儀式だっけ?」

「まあ、そうですけれど」


 水神家に伝わる七儀式というものは、そう簡単に観られる物ではないし、恥ずかしくてあまり見せたくはないんだけどなあ。


 一応紹介すると、以下の七つの儀式の総称です。

 健康を司る腱鞘(けんしょう)の儀式。

 精神を司る火回(ひまわり)の儀式。

 事故を司る水鳥(みずどり)の儀式。

 学問を司る木雲(もくくも)の儀式。

 商売を司る繫鐘(はんしょう)の儀式。

 芸術を司る盤土ばんどの儀式。

 始りを司る春陽(はるひ)の儀式。

 どの儀式でも、最初に必ず神水じんすいを飲みます。ただでさえ一つ一つやることが多いのに、七つもあるので、大変でしたよ。

 まあでも、それだけやれば後はぐうたら出来るので、だいぶ楽ですけれど。


「じゃあ、うちは商売繁盛を祈りたいから、繁鐘の儀式だね」

「はいはい、分かりましたよ」

 繁鐘の儀式は、中では一番簡単です。鐘の前で一礼をし、3回鳴らして鐘を抱きしめぎゅっと押し込む。割れたら、終了です。


 いつまでも割れぬ場合は、その案件は非常に危険である、やめた方が良いという意味になります。


「へえ、そうなんだ」

「じゃあ、やりますから。あ、あんまり見ないでくださいね?」

「なに、頬が真っ赤じゃん?」

「からかうのもやめてください」

「ごめん、悪かったよ。じゃあ、お願い」

「もう」


 鐘はすぐに割れました。あっさり割れすぎて、少し恐怖も感じましたが、それくらいに上手くいくというものなのでしょう。


「OKそうですね。辛くなったら私のところにまた来てください」

「そうかい!ありがとう。じゃあ、また今度宜しくね」

「はい。お待ちしてます」

 ようやく終わりました。


 その後の彼女は、凄くうまく行っているようで、業界では「魔性の女」と名が通っているようで、彼女は育成の道をしっかりと歩んでいるようです。


 そんな事を考えていると、目の前に眼鏡をかけたいかにも真面目そうな女の子が立っていました。

「あれ、お客さん?」

「…は、はい」

「どうしました?」

 大体賽銭箱の上にいるので、邪魔なのかなとも思いましたけど、どうやら見当はずれのようです。


「わ、私を、助けてください。私を、殺してください」


「…え?」

 こちらは、抑制が必要な神怪さんのようです。


「あ、あの一応お名前の方を」

「ああ、すみません。私は、凍雲氷結(いてくも ひゆ)です」

「それで、あなたのお悩みは」

「私、冷たいんです」

「…と言いますと?」

「何と言うのでしょうか。精神的にも身体的にもとても冷たいようなのです」

「…少しいいですか?」


 おでこを触れば何となく温度が分かるという特殊能力が備わった私ですが、だからと言って得したことは一度もありません。


「触らないでください」

「え、ああ、いや触らないと分からないんですけれど」

「ああ、そうですよね。すみません」

 …自分ではコントロールできていないのかな?


「へ、34度?冷たすぎじゃない?」

 これでは、まるで死体のようです。

「うるさいわね、黙って?」

「うわうわ怖いって!」

「す、すみません」

 …憑依されているようですね。


「あ、あの一応ここでは精神はともかく体温の方を治しますんで、そこに座ってもらえますか?」

「え、はい」

「じゃあ、行きますよ」


 腱鞘の儀式は、とんでもなくダサいのです。腱鞘炎はよく聞きますよね?それを私の体で行うことで、取り払うということです。

 あのーいわゆる、痛いの痛いの私のところに飛んでいけ作戦です。


「はい、終わりです。痛た…」

「早く終われよな」

「イラっと来ますね」

 怒りませんよ、神様ですから。ん?それは、仏でしたか?


「でも、性格の方は直し方は分かりませんね」

「そうなのですか?」

 人が変わりすぎて怖いですよ…


「あ、最近近くの人でお亡くなりになった方とかいませんか?それが憑依して…みたいな」

「それは、無いですね。皆健康ですし」

「そうですか」


 なんだか、ここで結論づいてしまえば終わった問題に、ここでは終わらないということでさらなる深さを感じます。


「私、この性格が出るせいで、いじめられているんです。まあ、当然なのでしょうけど」

「当然なんてことはないですよ。でも、原因が分かればいいんですけどね」

「…一緒に考えてくれるんですか」

「当たり前じゃないですか、神様ですよ?」

「…ありがとうございます!」

「わ、分かったから抱き着かないで」


 こんな子にまさか、あんな一面があるとは、今は思いもしませんでした。


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