かのとみデーティング 抑制と育成
「ありがとうございました」
さあ、閉めたところだし、後は娘さんを待つだけなんだけどなあ。
何と言っても、あの親の娘というのが見当もつかない。
男らしさで言えば、彼以上の男はいないといっても過言ではない。
だからこそ、その娘というのは、どうしてもそのイメージが頭から離れないために、女性像として見えてこない。
「どういう子なんだろうな」
「何とも言えませんね」
「お父さんたち、出かけてもいいかな?」
「え、ああいいですよ」
「行ってらっしゃいです」
「じゃあ、行ってくるね」
ガタン
「ここかな?あのとっつぁんのとこは?」
左手で遠くを見るような素振りを見せながら、完全にハイテンションでドアを開けた彼女が、どうやらお客様のようだ。
「じゃ、じゃあ私たちはこれで…、神那ちゃん上の部屋の窓開けたままだから」
「は、はい」
「おお、君たちがうちと話があるってゆっとった人かね?」
つかみどころがなさすぎる。
「なんだいなんだい、お話とやらは?」
「…ええと、あなたは神怪です」
神那ちゃん、パニックっていらっしゃる!
「おおと、それはなかなかなビッグニュースだね」
「落ち着いて、神那ちゃん」
「は、はい。あなたは、色々な男の人と関係を持っていらっしゃいますよね?」
「うん!」
「それは、人間としてはおかしいことなのです」
「そうなのか?でも、楽しいよ!楽しすぎて、やめらんねぇ」
落ちたトーンに、神怪の神怪たる所以が垣間見えた。
「それが神怪というわけなのです。常識的にはおかしくとも、自分にとっての楽しさは歓びは、他の人とは違う。そういうところなのです」
「ほええ、なるほどね。それで、どうすりゃいいの?うちは、うちこと辛巳乙未は、どうすりゃいいって言うのさ?」
「あなたには、二つの選択肢があります」
「え、二つも?マジ?迷うわ」
「抑制と育成、どちらが良いですか?」
「うーん、そうだな。うちとしては、育成の方がありがたいかな」
「そうですか、じゃあ育成の方で」
「神那ちゃん、育成の方って」
「あれでしょうね」
「うん?どういうことかな?」
「あなたには、会社を立ち上げてもらいます」
「え、でも14だよ?」
「大丈夫です、そこはお父様の名義にしましょう」
「具体的には、どういう仕事なんだい?」
「それは、仲人事業です」
「レコード事業?」
「何もそんなこと言ってないです」
「ごめん、つい。それで、仲人事業って?」
「社長さんと社長さんを繋げるとか、農家の人と業者さんを繋げるとか、そんな感じです」
「おお、それは良い!」
「あなたなら、うまくできるでしょうね」
「良いね!それ、やる!」
常識的におかしいからと言って迫害してしまえば、折角の才能を見捨てることになる。
天才と馬鹿は紙一重という言葉は、意を得て妙すぎる。
常識とは囲いにすぎず、そこから出てしまったら一斉排除してしまうというのは、いささか暴力的すぎるだろう。
適材適所。与えられた能力は、存分に発揮するべきだし、他の人によって潰されてはならない。人々は未熟なのだから、切り捨てることは良くないのだ。
「これからは、自分で社会を考えてください」
「分かったよ。社会に縛られるのも、悪くない」
「囲いの中で、自分ができる最大限のことを、楽しんでください」
「そうだぞ、わざわざ他人に嫌われなくてもいいんだ」
「OK!」
嫌われる囲いなら、自分で囲いを作れば良い。
己卯神那の信念は、辛巳乙未の信念へと変わる。




