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神怪だって、人間です!!  作者: サツマイモ
少数派・現実編
82/140

ちのさきハント 外がだめなら中から攻める!

 皆さんがそれぞれの島で、同じ目標に向かって努力している中、もっと言うなら、4月から5月にかけて。私は、ひたすら本都でのお仕事、つまりは神事を全うしていたのです。


 朝目を覚ますと、思わず暇なのですか?とツッコミを入れてしまうほどの長蛇の列。

 一人ずつ思いのたけをぶつけてもらいながら、私はそれぞれに合った言葉を掛ける。

 週に一度、舞を踊る。


 そんな毎日が続いていました。なかなかどうして、なれないもので、そんな生活に辟易していました。

 だから、後輩ちゃんから告げられた仕事はとても面白そうで、やる以外の答えは見当たりませんでした。


『本都の中心をおとす』


 そんな指令は聞いたこともありませんし、とても面白そうではありませんか。

 すぐに後輩ちゃんと合流し、具体的な作戦を練り、一人目、二人目と攻略していきます。


 まあ、基本彼女の能力を使えば一発ですし、私も取り戻したと言ってもいいので、庶民くらいなら簡単です。

 話をよく聞いて、相手の気持ちに寄り添って、少しずつ距離を縮める。心を開いた隙をついて、上を狙うための質問をする。


 少し、心を痛めますが、仕事なので仕方がありません。

 割り切らないといけないこともあるのです。3でも、7でも。

 皆まで言ってしまうと、なんだか私たちは小悪魔のようですね。あるいは、子熊のようですね。


「何言ってるんですか?」

「手厳しいわ、後輩ちゃん」

「先輩が厳しいことを言うからですよ。ぎりぎり面白くないです」

「辛辣だなぁ」

「というか、ここを、つまりは教堂をこんなに私物化していいんですか?もう、懺悔室兼デート会場みたいになっているじゃないですか」

「いいのよ、大丈夫」

「そうですか?」


 ガタン

「あれ、もうお客さん?」

「先輩、まだ13時です。当たり前ですよ」

「さいですか」

「あの、懺悔、良いですか?」

「ええ、どうぞ」

「私、とある壮大なプロジェクトに参加しているんですね」

「そうなんですか」

「なるほど」

「それが、私にとっては、とても難しいやり方…というか、成功する確率が低そうな、所謂当たって砕けろ作戦なんですよ」

「ほうほう」

「それは、難しいですね」

「でも、どうして止められなかったのかなって」

「なるほど」

「それは、あなたがあなた自身を責めるようなことではありませんよ」

「・・・さすが、茅野咲姫」

「そうですね、むしろ、少しずつここから意見を言っていけばいいじゃないでしょうか」

「下手に出る感じ、さすが、恙蒼葉だよ。だてに、喫茶店で人気No1じゃないな」


 この人は、私達の何を知っているのでしょうか。

 ふと隣を見ると、後輩ちゃんもきょとんとして、私の方を見ていました。

 三人寄れば文殊の知恵とは言いますが、ここには二人しかいないので、良い仮説が生まれません。


「…あれ、気づかない?ちょっと、傷つくなあ」

「…すみません、どこかでお会いしたのでしょうか」

「私だよ、涼風羽天だよ」

「…ああ!羽天さん!お会いしたのは、初めてでしょうか!」

「そうなの、後輩ちゃん?」

「そうだっけ、蒼葉さん?」

「羽天さんも忘れてるんじゃないですか!」

「ごめんごめん、私の脳は世界そのものだから、気づかぬうちに出会ったことになっていたよ」

 右手で軽く謝る彼女は、空前絶後の大天才のようでした。


「どうしたんですか、羽天さん」

「それに、成功する確率が低いとか?」

「逆に聞くけど、作戦を聞いてから1週間、何か成果あった?」

「ええ、来週には大臣までたどり着きますわ」

「そうかい、そりゃあ良かった。でも、来週は多分来ないよ」

「何でですか?」

 単純な疑問と、少しの苛立ちを混ぜた質問に、彼女は淡々と答えた。


「本都には、北方諸島反対の声が大きくなっている。他の大国にも、それなりに低い評価を受けている。いや、もっと言うなら、最悪だ。滅されてもおかしくはない」

「…そんなに?」

「殺人幇助国家。彼らは、我々をそう呼んでいる」

「…生贄、ってことでしょうか」

「ご名答、さきひめ君」

「…一応言いたいのですが、年上ですよね?私の方が」

「そうだとも」

「…分かっているならいいですけれど」

 腑に落ちませんけれどね。


「じゃあ、羽天さん。私たちは無駄だってことですか?」

「いやいや、無駄じゃない。ここで、私の作戦なんだけど」

「お、さっそく私たちの意見を採用してくれるんですね」

「そうだよ、蒼葉さん。少しの間、本都に監禁されてほしいんだ」

「…は?」

「…それは、どういうことでしょうか?」

「外から入れないなら、中から変えてしまえばいい。疎まれるという観点において、少数派は、寄生虫みたいなものだからね。私含め」

「何を言っているのか、さっぱり」

「うーん。あんまり、ネタバレはしたくないんだけどなあ」

「じゃあ、私にだけささやいてくださいな」

「分かった。さきひめ君には、言っておこう」


 ささやかれた内容は、ひどく時間がかかりそうで、それこそ憂鬱になりそうに遠い目標ではあったけれど、これが一番きれいな方法なのかもしれないと思ったのも事実だ。


「それは、うまくいくのですか?」

「少なくとも、失敗はしない。消されることはない。大丈夫、心配するな。君たちの大好きなヒーローが、やってくるはずだ」

「…」


 そういわれると、気恥ずかしさが体中を駆け巡ります。

 それは、後輩ちゃんも同様のようで、体を捻らせながら、くねくねしながら、恥ずかしがります。めちゃめちゃ可愛いです。


「分かりました。でも、あなたもしっかりと監視してくださいよ?」

「そりゃもちろん、危険にさらすんだ」

「じゃあ、また来週、宜しくお願いします」

「よろしくね」

 そう言って、彼女は去っていった。


「大丈夫なんですか、この作戦」

「まあ、大丈夫なんじゃない?彼女は、大天才らしいですし」

「そうですか」

 来週、監禁されるだなんて、どんなことがあっても負けないほどのニュースでしょう。

 そう思ったのもつかの間、北方諸島では大変なことが起きてしまいました。


「島爆破に、島長交代、それに島王射殺。それに、神様監禁が並ぶと、いよいよ世紀末ですね」

「後輩ちゃん、私達が生き残るかどうかより、皆が生きているかどうかが心配になってきましたわ」

「まあ、そこは信じるしかないんじゃないですか?」

「…それもそうだわ」

 さあ、捕まりに行きますわ。



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