ちのさきハント 外がだめなら中から攻める!
皆さんがそれぞれの島で、同じ目標に向かって努力している中、もっと言うなら、4月から5月にかけて。私は、ひたすら本都でのお仕事、つまりは神事を全うしていたのです。
朝目を覚ますと、思わず暇なのですか?とツッコミを入れてしまうほどの長蛇の列。
一人ずつ思いのたけをぶつけてもらいながら、私はそれぞれに合った言葉を掛ける。
週に一度、舞を踊る。
そんな毎日が続いていました。なかなかどうして、なれないもので、そんな生活に辟易していました。
だから、後輩ちゃんから告げられた仕事はとても面白そうで、やる以外の答えは見当たりませんでした。
『本都の中心をおとす』
そんな指令は聞いたこともありませんし、とても面白そうではありませんか。
すぐに後輩ちゃんと合流し、具体的な作戦を練り、一人目、二人目と攻略していきます。
まあ、基本彼女の能力を使えば一発ですし、私も取り戻したと言ってもいいので、庶民くらいなら簡単です。
話をよく聞いて、相手の気持ちに寄り添って、少しずつ距離を縮める。心を開いた隙をついて、上を狙うための質問をする。
少し、心を痛めますが、仕事なので仕方がありません。
割り切らないといけないこともあるのです。3でも、7でも。
皆まで言ってしまうと、なんだか私たちは小悪魔のようですね。あるいは、子熊のようですね。
「何言ってるんですか?」
「手厳しいわ、後輩ちゃん」
「先輩が厳しいことを言うからですよ。ぎりぎり面白くないです」
「辛辣だなぁ」
「というか、ここを、つまりは教堂をこんなに私物化していいんですか?もう、懺悔室兼デート会場みたいになっているじゃないですか」
「いいのよ、大丈夫」
「そうですか?」
ガタン
「あれ、もうお客さん?」
「先輩、まだ13時です。当たり前ですよ」
「さいですか」
「あの、懺悔、良いですか?」
「ええ、どうぞ」
「私、とある壮大なプロジェクトに参加しているんですね」
「そうなんですか」
「なるほど」
「それが、私にとっては、とても難しいやり方…というか、成功する確率が低そうな、所謂当たって砕けろ作戦なんですよ」
「ほうほう」
「それは、難しいですね」
「でも、どうして止められなかったのかなって」
「なるほど」
「それは、あなたがあなた自身を責めるようなことではありませんよ」
「・・・さすが、茅野咲姫」
「そうですね、むしろ、少しずつここから意見を言っていけばいいじゃないでしょうか」
「下手に出る感じ、さすが、恙蒼葉だよ。だてに、喫茶店で人気No1じゃないな」
この人は、私達の何を知っているのでしょうか。
ふと隣を見ると、後輩ちゃんもきょとんとして、私の方を見ていました。
三人寄れば文殊の知恵とは言いますが、ここには二人しかいないので、良い仮説が生まれません。
「…あれ、気づかない?ちょっと、傷つくなあ」
「…すみません、どこかでお会いしたのでしょうか」
「私だよ、涼風羽天だよ」
「…ああ!羽天さん!お会いしたのは、初めてでしょうか!」
「そうなの、後輩ちゃん?」
「そうだっけ、蒼葉さん?」
「羽天さんも忘れてるんじゃないですか!」
「ごめんごめん、私の脳は世界そのものだから、気づかぬうちに出会ったことになっていたよ」
右手で軽く謝る彼女は、空前絶後の大天才のようでした。
「どうしたんですか、羽天さん」
「それに、成功する確率が低いとか?」
「逆に聞くけど、作戦を聞いてから1週間、何か成果あった?」
「ええ、来週には大臣までたどり着きますわ」
「そうかい、そりゃあ良かった。でも、来週は多分来ないよ」
「何でですか?」
単純な疑問と、少しの苛立ちを混ぜた質問に、彼女は淡々と答えた。
「本都には、北方諸島反対の声が大きくなっている。他の大国にも、それなりに低い評価を受けている。いや、もっと言うなら、最悪だ。滅されてもおかしくはない」
「…そんなに?」
「殺人幇助国家。彼らは、我々をそう呼んでいる」
「…生贄、ってことでしょうか」
「ご名答、さきひめ君」
「…一応言いたいのですが、年上ですよね?私の方が」
「そうだとも」
「…分かっているならいいですけれど」
腑に落ちませんけれどね。
「じゃあ、羽天さん。私たちは無駄だってことですか?」
「いやいや、無駄じゃない。ここで、私の作戦なんだけど」
「お、さっそく私たちの意見を採用してくれるんですね」
「そうだよ、蒼葉さん。少しの間、本都に監禁されてほしいんだ」
「…は?」
「…それは、どういうことでしょうか?」
「外から入れないなら、中から変えてしまえばいい。疎まれるという観点において、少数派は、寄生虫みたいなものだからね。私含め」
「何を言っているのか、さっぱり」
「うーん。あんまり、ネタバレはしたくないんだけどなあ」
「じゃあ、私にだけささやいてくださいな」
「分かった。さきひめ君には、言っておこう」
ささやかれた内容は、ひどく時間がかかりそうで、それこそ憂鬱になりそうに遠い目標ではあったけれど、これが一番きれいな方法なのかもしれないと思ったのも事実だ。
「それは、うまくいくのですか?」
「少なくとも、失敗はしない。消されることはない。大丈夫、心配するな。君たちの大好きなヒーローが、やってくるはずだ」
「…」
そういわれると、気恥ずかしさが体中を駆け巡ります。
それは、後輩ちゃんも同様のようで、体を捻らせながら、くねくねしながら、恥ずかしがります。めちゃめちゃ可愛いです。
「分かりました。でも、あなたもしっかりと監視してくださいよ?」
「そりゃもちろん、危険にさらすんだ」
「じゃあ、また来週、宜しくお願いします」
「よろしくね」
そう言って、彼女は去っていった。
「大丈夫なんですか、この作戦」
「まあ、大丈夫なんじゃない?彼女は、大天才らしいですし」
「そうですか」
来週、監禁されるだなんて、どんなことがあっても負けないほどのニュースでしょう。
そう思ったのもつかの間、北方諸島では大変なことが起きてしまいました。
「島爆破に、島長交代、それに島王射殺。それに、神様監禁が並ぶと、いよいよ世紀末ですね」
「後輩ちゃん、私達が生き残るかどうかより、皆が生きているかどうかが心配になってきましたわ」
「まあ、そこは信じるしかないんじゃないですか?」
「…それもそうだわ」
さあ、捕まりに行きますわ。




