すずかぜミスチーフ 後
結局あの後、すぐに病気は改善された。と言うのも、羽天がウイルスを殺したわけなのだ。しかし、だからと言って、罰はしっかりと受けてもらう。しっかりと懲りてもらわないといけない。しかしながらどうしたものか、こういうお仕置きってあんまりやったことないからいまいちわかんないんだよね…。
「神怪にとって、最も必要不可欠なものは、名前です。彼女、相当今の名前気に入っているようなので、少し変えてみるのは如何です?」
羽天のことになると、一段と厳しい神那ちゃんだった。
「さすがに、それって酷じゃないか?」
「いえ、それくらいのことをしましたから。もし、それが嫌なら期間限定とか。」
「それなら、いいかもしれないな。」
ということで、3ヶ月間、名前を変えて差し上げることにした。
そして、彼女の家に向かう。
「なあ、羽天?」
「うん?どうした兄ちゃん?」
「いや、お前の兄ちゃんじゃないんだけど…それより、罰を考えてきたから。」
「…ゴクリ。何でしょうか?」
「お前は、今日から3か月間、虱涼羽天だ。」
「しら・・・すず?」
「虱に、涼しいで、虱涼。」
「何ですかそのだっさい名前。」
「それくらいだっさい名前が罰に丁度いいだろう。」
『風』という、地下以外に逃げ場のない密閉された中で成長した虫の名前を俺は知りたかった。だからこそ、一つドアをけ破ったわけだ。それで、その答えは『虱』。彼女に寄生していた正体は、きっと憎悪という虱だったのだろう。なんて、格好つけてみたのだ。あと、彼女の人間時代の名前は、天羽飛涼。ちょっと、似てないか?
「…ふふ。しっかりと、償います。」
彼女の笑顔は、小悪魔的な天使の笑顔だった。
「そういえば、あの後楓さんに会ったよ。」
「え、マジで。…なんて言ってた?」
「お姉ちゃんがいたっていう記憶はやっぱりないって。」
「…そうだよね。」
「でも、日々生活している中で、絶対に私以外の力がないとあり得ないことがよくあるってさ。」
「…え。」
「まあ、なんだ。たまには、帰ってやれよ。」
「…うん。」
「それともう一つ。」
「何?」
目をこすって涙をふく彼女に少し酷なことを言ってみる。
「友達作れよ。」
「ぐふっ。」
「べただな、おい!」
「この性格なので、無理がある気がします。」
自分でも、分かってるんだ。じゃあ、直せよ。
「性格だと、なおすって漢字はどっちになると思う?」
「病気ってわけじゃないだろうし、実直の直なんじゃないの?」
「ひねった性格を真っ直ぐに直すってことだろうね。」
「分かってるなら、わざわざ聞くな。」
「いいの?また拗ねちゃうよ?」
「いいのか?今度こそ退治に来るぞ。」
「それは無理だろうね。胎児の手を捻るくらい簡単だよ、足助君は。」
「それを言うなら、赤子の手をひねるだろ!…え?足助君?」
「あれ?名前間違えた?」
「いいや、合ってるけど。」
「これからは、神怪の友達として、宜しく足助君。」
その顔に、一点の曇りはなく。
天使の笑顔そのものだった。
以上、第七話『すずかぜミスチーフ 後』でした!
きっちりと(?)完結させられて良かったです!
次話から第二章『ともしびレカンシリエーション』が始まります!
燈火ヘスティア炎香が葛藤するお話です。
ぜひともよろしくお願いいたします!!それでは。