りずルーティング 開かれた姫の矢先の終わり
「では、条件として、うぬがお婿に来たら考えてやろう」
「いや、だからそんなことしている暇はないんだって」
「ならばなおさら、今すぐにでも承認すればよいだけじゃろう」
「いや、なんでだよ。ここは、少し手を引いて手をつなごうと言っているんだよ。あ、やめてズボンは引っ張んないで」
「だったら、うぬも。顔を押すのはやめてくれんかのう?」
「お前がそうやって引っ張っている限り不可能な願いだな」
「なんじゃってそんなに拒否をするのじゃ、さすがのわらわも傷つくぞ?」
「だって、別にタイプじゃないし」
あ、やべ。言っちゃった。
「先ほどからなんというお粗末なコントを見せられているのかと思っていたら、それはさすがに言ってはいけないのではないでしょうか?」
神那ちゃんのツッコミほど的確なこともない。
「同じ男性として、そしてリズ王女の御付きの者として、さすがに聞いてはいけないことを聞いてしまいましたね」
じいやさん、ごめんなさい。そんなつもりじゃあ。
ああ、泣いちゃった。子供みたいに泣きわめき始めちゃった。
「だって、わらわは可愛いもん!わらわこそ、うぬなんてお断りじゃ!」
「あーあ、拗ねてしまいました」
「こう拗ねられてしまうと、なかなか戻ってきませんよ」
「・・・申し訳ない限りですけれど。どうすればよかったんですか」
「そりゃ、やぶさかくんが受け入れればよかったんじゃないですか?」
「いや、でもさすがに」
「じゃあ、しょうがじゃないですね」
「どうするつもりなんですか?」
「じいやさん、少し聞きたいことが」
「ああ、それなら」
二人でこそこそ会議し始めちゃったよ。完全にリズは俺のこと見てくんないし。ごめんって本当に。
「リズさん」
「な、なんじゃ?」
「これ、本当は私のおやつだったんだけど」
手渡したのは、みかんだった。
「みかん?」
「みかん!!」
どうやら、彼女は喜んでくれたみたいだけどももしかして、厨房に合ったみかんなのでは?
「隣の芝生は青く見える。誰かの物だと言えば、それだけで少しだけ価値があるのですよ」
「そういうことなのか」
「ほら、嬉しそうじゃないですか」
リズのはじける笑顔は、俺たちの心を温かくさせた。
「リズ、さっきはごめん」
「許さない」
「げ」
「でも、共闘はしてあげてもよかろうよ。ちょうど、あなたみたいな…」
その瞬間は、何が起こったのかは理解できず、ようやく整理がついたのは、その惨状が広がり始めたころだった。
窓の外からこの部屋へまっすぐ飛んできた槍がリズを守ろうとしたじいやの胸を貫通し、その場に倒れこんだところを、10発以上の、弓矢が降ってきた。そして、降ってきた矢の雨は、リズの全身を突き破った。
「リズ、リズ!!」
「はあ、はあ。どうせ…こう…なる…運命だった…んじゃ」
「そんなことはない!絶対に」
「しょうが…ない…。あーあ、最後に、王子の…接吻…でもあれば」
「ああ、それで直るんだったら何回だってしてやる。お前の人生が、不幸で終わっていいわけがない!」
「何…言ってるの?私なんて、不幸で良いんだよ。気品を…装っただけ。虎の威を…借りたのは私」
「だったら、黙って最後くらい幸せになりなさい!」
「神那ちゃん」
「やぶさかくん、キスでもなんでもしたらいいわ。彼女がそれで、幸せになるのなら」
「おねがい、薮坂」
「分かったよ」
彼女は、程なくして、息を引き取った。
窓の外を見ると、本都ではない軍隊の人と、この島の住民だった。
どうやら彼らは、生贄になるために生まれてきた人らしい。
誰が決めたのかは結局定かではなくなってしまったが、少なくとも、レイラ家の方針だったのだろう。
「殺人国家に死を」
そう書かれた横断幕が、一日中掲げられた。
俺達が帰ってこれたのは、夜中だった。




