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神怪だって、人間です!!  作者: サツマイモ
少数派・現実編
78/140

りずルーティング 閉ざされた王女の歪んだ望み

 リズ・レイラは純粋な王女である。北方の島々では唯一の王政を2000年以上続けている由緒正しきレイラ家の第一王女なのである。


 見た目は、その麗しさに跪かないものはいないと呼ばれるほどで、彼女が女王となったら、命が危ないと言われるほどである。


 しかし、その王女リズは、この島の住民も知らないような事情を抱えている。

 性格というものは、そして人の価値観というものは、幼少期に養われ

 るというらしいが、彼女の場合幼少期という時期が、失われている。


 失われているというと、少し血腥く、きな臭い感じに聞こえてしまうかもしれないが、いわば宮殿で幽閉されていたのである。

 年の近い友達はおらず、相手をしてくれるのは、いつだって大人。


 そんな生活が続く彼女に、とある転機が訪れた。12歳のことである。王女の就任式に出ることになったのだ。


 特殊な王政という政治形態に、特殊な就任方式。一応調べてはいたものの、いまいちよく分かっていないのだが、とりあえず彼女は12歳の時に、世の中を知った。


 井の中の蛙大海を知らずとはよく言ったものだが、彼女の場合、大海を知ったとき、喜びよりも悔しさよりも、憎しみが増したという。


「なぜ、わらわよりも人々は幸福を噛み締めておるのじゃ」


 そう言うと彼女は、今度は自ら、宮殿に籠った。


 人々が憎い。住民が妬ましい。島民が嫉ましい。住人が羨ましい。

 皆のような幸福が欲しい。欲しい。欲しい。


 次第に彼女の嫉妬心は赤黒く燃え上がり、その炎は様々な方向へ影響を及ぼした。


「お嬢様、次のお見合いの相手なのですが」

「彼女はおるのか?」

「え、彼女ですか?いえ、お嬢様。お見合いに来るような者は皆、お嬢様を愛し、大切にしていただける人たちばかりでございます。決してお嬢様以外を愛するような者はおりませぬ」

「それじゃあ、ダメなのじゃ。わらわは、そういう奴は要らぬのじゃ」

「ですが、お嬢様」

「分かったら、ピザでも買ってきてくれんかの?」

「…承知いたしました」

「行ってらっしゃい」


 その荒唐無稽のやけくそにも思われた、前代未聞で空前絶後な態度は、瞬く間に宮殿内を超え、人々にまで知れ渡った。


「次期王女は、魔性の女だ」


 この肩書の魔の部分を残して伝わっていくのは、やむを得ない。

 彼女は、そういう経緯によって、少数派の仲間入りを果たしたのだ。


 誰かの所有物であることに価値を見出す。

 別に、これは誰もが持っている一感情だ。サッカー選手のスパイク、野球選手のバット、歌手のマイクなどなど。


 しかし、彼女がいることで男の価値を見出すということは、住民にとって恐怖の対象である。


 彼女の風貌を考えれば、必ずと言っていいほど男は虜にされてしまうのだから。

 囚われの姫から、虎被せの姫へと、ジョブチェンジを果たした。


 ―――――――

「うぬ、名を何と言ったか?」

「薮坂、足助だ」

「良いのう。実に良いわ。うぬ、わらわの婿に来ないか?」

「それは、勘弁してくれ」

「冗談じゃよ。上段だと思えんか?我ながら上等だと思ったのじゃが」

「悪いな、俺には愛する彼女がいるんだ」

「知っておる。じゃからこそ、誘っておるのじゃ」

「さすが、人の物じゃないと愛せない王女だな」

「さすがに知っておったか。では、話は早い。夜の戦と行こうではないか」


「望むところだ…と、言いたいんだけど」

「だけど?」

「今そんなことしてる場合じゃないんだ」

「というと?」

「ニュース、見てないか?」

「ああ、あの島爆破という奴じゃな。あれさすがにわらわもやりすぎじゃと思ったぞ?」

「そう、あれがこの島でも、そして他の北方の島でも起きようとしている」

「そうなのか」

「だから、俺たちは共闘しなければならない」

「なるほど、それは困ったのう」

「じゃあ」


「では、条件として、うぬがお婿に来たら考えてやろう」


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