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神怪だって、人間です!!  作者: サツマイモ
少数派・革命編
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いばらピュアレスト Golden take over

「あ、島長!」

「こんちはー、島長!」

 丁度畑で作業中だった街の人々が声を張り上げて挨拶をする。こんなに清々しい挨拶をされてしまえば、私もそしてイヴァラさんもしないわけがない。


「こんにちは」

「こんちわっす」

「お隣の子も、こんにちは!」


 なんと。全然見知らぬ人にまで挨拶をするとは、素晴らしい心を持った人々ではないか!


「住民の人も、すごくいい人ばかりだね」

「住民は、私にとって子供みたいなものだからね。躾というのかな。美しさは内面からということを教えているんだ」

「なるほど」


 人が良すぎて、すごく嬉しくなった。羽天さんならこういうところで疑うんだろうけど、なにせ悪魔の中では愚か者ですから、すぐに良い人だと思っちゃいますよ。


「ねえ、炎香さん」

「ん?何でしょうか?」

「この島についてどう思った?」

「ええと、そうですね…。住民は優しいし、自然も美しいし、それに小豆もまた美味しいし、いいとこづくめだよ。まさか、こんなとこが苦しい経営に苛まれているだなんて」

「やっぱりそう見えるか」


「でも、そうだな。私には、というか私情としてじゃなくて客観的に見て少し違和感も感じたかな」

「というと?」

「なんか、白すぎるというか、白々しいというか。皆が皆苦しい生活をしているというのに、反対運動も何もないとは、少しおかしいのかなって」

「見事だね。じゃあ、もう十分かな」

「え、どういうこと?」

「よし、着いたよ」


 山から見えた景色は、瑞々しい川の流れと、緑の栄える畑と野原。広大な土地から視線を少し上げると、青色に美しく染まった海。太陽は、そのすべてを包み込むように燦々と照っていた。


「うわあ。綺麗だな」

「そうか、気に入ってくれたなら良かった」

「すごいですね。引き込まれちゃって、意識が遠のいちゃいます」

「よし、じゃあ始めようか」

「うん?」


 振り向くと、イヴァラさんは何もない草の上に横たわっていた。昼寝をしているのかと一瞬思ったが、そんな事では全くないことに気づくのに時間はかからなかった。


「…どしたの?」

「目的は達成した。もう、僕は仕事を全うしたんだ。あと少しで、死神さんが来るよ」

「…目的って?」

「そりゃもちろん。幼女とのデートだよ。この島には遊ぶところがなくてごめんね」

「ちょ、ちょっと待って…なんで、今なの?まだ早いよ」

「いやいや、逆に遅すぎたんだ。本当は本都がこの島から手を引く時に殺されなければいけなかったんだ」

「手を…引く?」

「そうだよ。配給になったって言うのは、近くの島に頼ったり本都の闇ルートにお願いしたりして、ようやくまかなえたんだ。それももう限界を迎えたんだ」


 違和感を覚えたのは、住民の瞳が嬉しさや楽しさからくる澄んだものではなく、死期を悟った遠い目だったということに今更ながら気づいた。


「だったら…だったら!立て直すまで、最後までいなさいよ!」

「最悪の災厄を連れてきたこの僕が、生きていてはいけないんだ。もしかすると、君の持ってきたその案が、最後の策になるかもしれない」

「でも、そんな…。住民は?これからどうするの?あなたは子供を置いて逃げるの?」


「逃げるんじゃない。退くんだ。大丈夫、彼らはうまくやれるはずさ。本都にもう一度頼ることになるかもしれないし、君たちの島にお世話になるかもしれない」

「そんな…」

「その時は、宜しく頼むよ」

「そんな、こんなのって」


 あんまりだ。住民が可哀想すぎる。どうあがいても助けられないものなのか。

 考えろ。考えろ。考えろ。

 零れ落ちる涙を拭き、必死になって自分の脳みそを回す。

 羽天さんだったら、こんなことにならずに解決するんだろうな。

 三波ちゃんだったら、最善策を提案するだろうな。

 茉釣さんだったら、成仏させないんだろうな。

 やぶさかくん、ハナガさんだったら。



「じゃあ、私が」

「うん?」

「私が、あなたの跡を継ぎます!」

「そう言ってくれるのを待っていた」


 今にも零れ落ちる涙を拭き、凛とした表情で、イヴァラさんを見つめる。


「あなたの作った島を、大切な住民を、生き生きとした清々しい街に、立て直します!」


「そのために、君には来てもらったんだ」

「…え?」

「今回のデートは、この島の実情を知ってもらうため。そして、君の性格がこの島に合っているかどうかということ。住民が挨拶してくれるように、君はこの町に認められているということだ。本当にそれが何よりよかった。安心して、成仏ができる」


「…少し、待っていてください」

「え?」

「いいから、死神さんが来ても、少し待ってもらってください」

「ほう…、分かったよ」


 それから私は走った。山を全速力で駆け下り、すぐふもとの畑の持ち主のところに話をした。それを聞いて信じてくれた街の人々は、自分の仕事をほっぽって、すぐさまこちらへと向かってくれた。


「…え、皆さん?」

「なんだよ島長!言ってくれよ!!」

「そうだ、一人で逝くだなんて、寂しすぎるよ!」

「そうですよ!!」

「…みんな。みんな!!」

 イヴァラさんにも涙が浮かんだ。


「ありがとうな。今まで付いてきてくれて」

「とんでもない!あんな町から抜け出せたのはあんたのおかげだよ!!」

「ありがとう、本当にありがとう。次は、この彼女がやってくれる」

「おお、君がやるのか」

「若いじゃないか!いいねえ、好みだよ」

「何じいさんみたいなこと言ってんのよ」

「すまん」

 一斉に笑いが起こった。その瞬間に彼の姿はもうなかった。


「皆さん、何卒よろしくお願いします」

「一緒に頑張ろうな」

「本都が手を引いた事、後悔させてやろうぜ!!」

「はい!!」


 イヴァラ・マルティントは、この日を以て成仏した。


 燈火ヘスティア炎香は、この日を以てこの島の長となった。


 空が青い。野原が緑色に茂っている。朱に染まる夕日が一層輝く。

 黄金色に輝く未来を求めて、私たちは進む。


 後は頼んだよ、皆。


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