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神怪だって、人間です!!  作者: サツマイモ
少数派・革命編
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いばらピュアレスト Praise Her Cuteness

 まさか、こんなに早くデートにこぎつけられるとは思わなかったので、1週間くらいをめどに取っていたホテルも、程なくして退出することになった。


 なんていうんだっけ…、ログアウトじゃなくて…ジャックアウトじゃなくて…

「チェックアウトですね」

「ああ、それです。お願いします」

 ジャックアウトってなんだよっと自分にツッコミする。

「ええと、20000ルトになります」


 …おっとそうだった。人間界にはお金という制度があるんだった。

 確かにあの羊羹買った時もそんなこと言っていたけど、あの時は店員のおばあちゃんが優しくて、ただでくれたんだよね。

 …やべ、お金っていう存在忘れていたわ。

 軽度の認知症みたいだな、まあ270歳だし許してよ。

 こっからはどうしようもないし、言い逃れが正面からではできないので、この270年の知識と、幼女の見た目をフルに使って、逃げようかな。


「はい、お願いします」

「はい、確かに」


 はいはい、分かってますよ。私にはそんなことはできません。法律を守り、相手を思いやり、尊敬する私ですから。そんなことはできないっす。


「では、またのお越しをお待ちしております」

「ありがとうございます」


 よくよく考えてみれば、この島の9割は子供なわけだから、いくら幼女の見た目を使ったところでなんのストロングポイントにもならんやんか。


 …せっかくイチゴ柄のシャツなんだけどな。


「さて、少し時間が余っちゃったな」

 今の時間は午前の9時。あそこに行くのに10分もかからないので、少し時間が余っちゃった。少し暖かく汗が零れる。

 余ると零れるって漢字似てるな。


「あんみつ食べたいな」

 近くにあんみつ屋さんを探すも、なかなか見つからない。というか、食事屋さんが…ない?


「あれれ…?」

 探せど探せど見つからない。探索しようにも詮索しても検索しても見つからないんじゃ話にならない。結局本屋で本を漁って公園でそれを読むことにした。


「…それにしても、大きいなあ」

 創作活動を始めたばかりなのかなという駄作もちらほら見られたのだが、そういう駄作は決まって本都を賛美したものだったりするので、おやおやと言った感じですけどね。


「うん?これって…」

 見た物は、この前の会議でも見かけた本で、辞書のように重かった。


「北方神怪図鑑?」

 本都の読み方には自信はなかったけど、その下に私の生まれ故郷の言語で『North Ghosters dict`s』と書いてあったので多分間違いないだろう。


「ほえ、こんなものが」

 もしかして、私のことも事細かに書かれているんじゃないかと思い、他の人も載っていることにも興味を示しつつ購入に踏み切った。

 確かに高いけど、抗うほどでもデモ起こせるほどでもないので、ちゃんと順守して遵守して買いましたよ。


「さすがに羽天とか、三波ちゃんは載ってないか」

 最近なったから載っていないのも仕方がないけど、でも内容としては申し分ない。たぶん来年くらいには選考委員会が載せるだろう。

 選考委員会というのを、寡聞にして聞かないけど。


「そして、お!私のが載ってる」

 どれどれ…?


『天道無親な愚か者』

「おいおい、愚か者ってそりゃないだろう」


「でも、悪魔にとっては愚か者はつまりは偽善者ということで、つまりは優しい人のことをさしますよ」

「ひえ!あ、イヴァラさん。ありがとうございます。でも、偽善者と言われてもねえ。というか、時間すぎてますか?!」

 慌てて周りの時計を確認するが、10時は過ぎていなかった。


「やらない善よりやる偽善。大丈夫です。楽しみすぎて私が先に来てしまっただけですよ」

「そうっすか。私も少し楽しみで」

「じゃあ、行きましょうか」


 公園の周りは、一面に畑が広がっていた。やっぱり名産品の小豆だろうか。全面的に後援しているように思えた。確かに、この見た目は素晴らしい。綺麗だ。意識が遠のく。


「行きましょう!!でも、この辺ってお茶できるところないんだろ?」

「ええ、最近は食べ物もロクに売ることもできませんから。今は、配給制なんです」

「へえ、大変だね」


「そうなんですよ。でも、この島はまだ明るい方だ。他の島は限界だったりするので。小豆を作る人々の笑顔は、とても美しい」

「そうですね」

 彼のその表情は、純粋な笑顔では全くなく、そこには寂寥感とか、悲壮感があんこのようにすりつぶされて詰め込まれていた。

 少し瞳が潤んでいるのも、見えた。


「こういうのは、やめよう。今日は楽しいデートだ」

 もしかして、自分の人生の、神生の顛末を知っているのだろうか。


「そうだな。今日の格好はあんまりしたことないんだけど、可愛いか?」

「ああ。勿論。可愛さで探していたら、君が見つかったんだ」


 イチゴ柄のTシャツに、赤と黒のタータンチェックのスカート、靴はスニーカーだ。

 あんまりラフな格好ってしたことないけど、可愛いと言ってもらえてよかった。

「ありがとう」


「疲れたかい?」

「いやいやまったく。そっちこそ疲れたんじゃないの?憑かれているみたいな顔だよ」

「少しね、憑かれたみたいだ。じゃあ、最後は山の頂上へ向かうよ」

「よし、少し辛いけど、頑張ろう」

 そして、私たちはあの山の頂上へと向かった。


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