いばらピュアレスト Calm Invitation
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少し前に遡る。具体的に言うならば、この作戦の会議が開かれた日のこと。
この日は、桜の花が満開を迎え、比較的穏やかな日光が私たちの背中を暖めてくれる。
市役所に集合せよという知らせを受け、その内容知りたさに少し駆け足で言ってみると、役所のやぶさかくん、神那ちゃん、まつりさんは勿論のこと、真面目な三波ちゃんとその妹たちがすでに到着していた。
「あ、こんにちは!お久しぶりですね、炎香ちゃん」
「うん、久しぶり!三波ちゃんと…泉咲ちゃんと奈波ちゃんだよね」
「うん!ヘスティア姉ちゃん久しぶり!!」
「うん、久しぶり」
「…あれ、羽天さんは?」
「もう行っちゃったんだよね。えっと、ナンジバラの方に」
「…それは、どうして?」
「なんか、先に島のことをすべて調べ上げて、それぞれの能力に見合った島を選んだうえで、残ったところを選んだらしく。しかも、その調べあげた調査資料?みたいなのを置いていったんだけど、それが俺たちが2日徹夜して作ったのと全く同じだったんだよ」
「私は、だから苦手なんだよ。あいつ、多分それ20分くらいで作ったよ」
「そう思います。あ、コーヒーと饅頭です」
お盆を両手で抱え込む彼女との間に、もう壁があるわけではないことを、彼女の笑顔から察することが出来て良かった。まあ、そのために喫茶店通い詰めたし、今ではバイトもしてるし、功を奏したって感じだ。
「ありがとう」
「じゃあ、そろったことですし、始めましょうか」
「じゃあ、配るね」
1人ずつに5枚くらいの紙を渡された。
「私たちは…えっと、この島って」
「ああ。水神家で頼みたいのは、アスピトルっていう島なんだけど」
「人が愛せないって?」
「その言葉通りだよ。もっと正確を期するなら、正鵠を射るなら愛するということが分からないという感じなのかな?とりあえずそこは、水神家で頑張って」
「…分かりました!」
「頑張ろう!!」
「いえーい!!」
「で、私は…これって」
「うん、ロリコンだな」
「ああ、ロリコンだ」
「ええ、ロリコンですね」
もしかして、こういうことが分かっていたから神那ちゃんは笑っていたんだな。
微笑みじゃなくて、嘲笑いだったな!
「私が、やるんですか?」
「大丈夫、彼の場合、見た目の年齢じゃなくて、心の年齢重視だから」
「心の年齢?」
「純粋で、元気な子ならあまり年は関係ないみたい」
「…私に最適なの?」
「悪魔なのに、優しいという時点でOKじゃないかな」
「そんなものなの?」
「まあ、俺たちのところよりはましだよ」
「どうして、私が足助さんの彼女にならないといけないんですか」
「しょうがないよ、だってそういう神怪だからさ」
「そうですか、なら私はこっちで良いです」
「なんか、俺のことになると急に冷たいな」
「そんなことないですよ」
私は、おじさん以外は論外ですから。
「ヘスティアさんは、葉長さん大好きですもんね」
「・・それは、ちょっと」
「ほえ、そうなんだ」
「その話はもういいでしょ!じゃあ、来週行けばいい?」
「ああ、それで、一つお願いがあるんだけど」
「お願い?」
「そこのおじさんとデートしてきてよ」
「え、どうしてですか?正気ですか?茉釣さん」
「ああ、違う違う。デートじゃなくて、引導」
「より見えなくなってきたんだけど…」
「天に召されるまでの引率をしてほしいんだ。あの人、もう寿命ないからね」
「え、神怪に寿命とかあるんですか?」
「え、そうなの?」
「おいおい、知らないのかよ」
「神怪によって与えられた目的というのがあります。それは、実は知らない人の方が多いんですけど、その目的が達成されれば晴れて成仏というわけです」
「へえ」
それは知らなかったな。私のって何だろう。
「それで、そこのサジスタ島の神怪はそれが目的だったんだ」
「え!?そんな自分勝手な」
「行けば分かる。あまり先入観を持って潜入しないでほしいからね」
「そ、そうですか」
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「じゃあ、今度デートしよう」
…え、まじっすか。そんな簡単に決まるものなんですか?
「え、ああ、いいですよ。いつにしますか?」
「じゃあ、明後日にしよう。明後日の10時にここ集合で、結構歩くから動きやすい服装でね。たぶん、仕事用にそれはおめかししたんだろうけど、多分動きづらいでしょ」
今日の服装は、私の歴史の中でも類を見ないほどのド派手な格好で、しかもハイヒールなので相当動きづらい。
そのオマセな感じと純粋な努力というもののアピールが成功したようで助かった。
「じゃあ、明後日。楽しみにしてますね」
「うん、今から楽しみだよ」
この老紳士は、たまにあの老紳士と被る。
優しい口調とか、見透かしたような優しい瞳。
楽しみだな。




