いちげオーバーターン 潜入調査に危機と聞きは付き物
どうも、お久しぶり羽天です。
どうしてこんなことになっているのかというと、まだ深いところを突っ込む段階にもないので、はっきりとは言えないけど、簡単に言ってしまえばあの足助プロジェクトの第一弾なのだ!
まずは、このナンバジラという島の攻略に、天才の私が選ばれたというわけですよ。
「ごめんね、お手洗いに付き合わせちゃって」
「いやいや、場所分からないならしょうがないよ」
「じゃあ、ちょっと待ってて」
あ、本当にこれはお手洗いに行きたかったわけで、別に作戦とか全く思ってなかったけど
「うん、もちろん」
この反応を見るに、やはり噂通りなんだなって思ったよ。
まさか、少数派が島長の息子だったとはね。
「ふう」
え、もしかしてトイレタイム期待できるとでも思った?全然だめだね、私のことを分かっていないようだ。私は、例え大きい方でも小さい方でも、一発でだ全て出すので、時間は1~2秒なのだ。むしろ、下着を下ろしている時間の方が長かったりする。
「ごめん、お待たせ」
「え、終わったの⁈」
「え、うん」
「早くないですか…?」
「大丈夫!」
「そうですか、ならいいんだけど」
「あ、戻らなきゃ」
「え、ああそうだね」
「3、2、1」
「え、え?」
「ダッシュ!!」
「あ、ちょっと!廊下は走っちゃだめだよ!!」
違反であることは重々分かっていたけど、こんな感じでやれば印象的に映るんじゃないかという、友達少なめの私の渾身の策だった。
お話とか苦手なんだよね。すぐ頭いいのバレちゃうから。それで、すぐに目の前を去っていくのが目に見えているんだよ…。悲しいなあ。
そんな感傷に浸っていると、委員長もまたダッシュしていた。
そんなこんなで、結局すれすれで間に合った。
「いいの、委員長が走っちゃって?」
「しょうがない、今回は緊急事態だったので」
「そういうことにしておきますか」
最初の授業は、偏差値高いだけあって、うちの学校よりも数段聞く価値があった。まあ、そもそも一周したところだし、分かんないところはないんだけど。
「いやあ、何言ってるかさっぱり分かんねえ」
「まあ、ワークやれば余裕っしょ、答えあるし」
「お前答え暗記かよ」
「まあな」
ガハハハッという笑い声が教室中に響き渡る。
あーあ、こいつアホだぁ。
「ねえ、あの」
「え、えーと君は確か」
「斜め前の席の、安城旱です」
「ああ、委員長のお友達の…どうかした?」
「あの、寝ちゃって聞いてなくて。ノート貸してくれませんか?」
「ああ、ごめんノートは取ってなくてね。口頭で良い?」
「分かりました」
喋る片手間ノートを見ると、この子はすごく勉強できるんだなって思った。
綺麗に並べられてるというよりは、それぞれ群にしてまとめている感じが、凄く共感できたよ。
「ねえ、いきなりで申し訳ないんだけどさ」
伝え終わったタイミングで、尋ねてみた。
「何でしょうか」
「君、結構頭いいよね?」
「僭越ながら、学年一位は守らせてもらってます」
「お、やるねえ。じゃあ、知っているのかな?委員長の秘密も」
「ええ、親友ですから」
「いいねえ。そういうの、嫌いじゃないよ。それで、家族は知ってるのかい?」
「さすがにそこまでは」
「そうか、ありがとね」
「いえいえ。というか、どうしてそれが気になるんですか?」
「それが、この町に来た理由だからね。あ、授業始まる」
「なんか、思わせぶりですね。あ、本当だ」
なんか、旱ちゃんはもう気づいたかもしれないなあ。
まあ、いいや。きっと彼女ならこちら側に手を貸してくれるだろうし。
「冗談交じりの商談にも応じてくれるんじゃないかな」
独り言が、少しばかり大きくなってしまったが、幸いにも彼女には聞こえなかったようだ。
「おーい、じゃあ授業始めるぞ」
「先生、教科書ありません!」
「あれ、買ってないのか?」
「まだ届いてないみたいです」
「そうか、じゃあ隣の奴に借りなさい」
「分かりました」
よしよし、これが学生だろう。私がなれなかった学生に、なれるのだ。
「ねえ、羽天さんだっけ?」
「え、ああ、うん」
「君さ、本当は学生じゃないんでしょ?」
「え、えーと?」
「そんな感じがする。なんか、凄く大人っぽい」
「木の所為じゃないかな?」
「木?」
「私の家、木造建築で杉の香りがするから。それで、大人っぽく感じるんじゃないか?」
…私って、こんなにバカだっけっていうくらいへたくそな嘘を吐いた。
「そっか、そういうことか」
…私以上のバカがここにいた。
こんな危機(?)を乗り越えつつ、初日は恙なく終えた。




