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神怪だって、人間です!!  作者: サツマイモ
食物連鎖の頂点・山菱菊梨編
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くくりフルコース 純白のガーベラと鮮紅の鬼灯

「…う~ん。それではだめというか、そのせいでこうなっているというか…」

「そのせいで?」

 ついさっきまで体調が良くなかった神那ちゃんが、ようやく立ち上がって俺の意見を軽々と否定した。

「そもそも、子供を産むことができる人が少ない昨今、結婚をしたくないという独身の人も増えたので、必然的に子供が産まれないという事態が近年、深刻さが増しているのです。つまり、普通に結婚して子供を産むというのが、普通ではなくなっているのです」


 そうか、時代はもうそんなことになっていたのか。…ん?


「きっと、子供を産むことができないというのは、相対的に男が少ないということなんでしょうけど、でもだったら、どうしてこの島にはそれなりの人数の子供がいるんですか?」

 この島は、田舎こそすれ、大き目な学校も島の中心にしっかりと存在しており、少なく見積もっても200人はいるはずなのである。


「まあ、今は私が責任もってその辺は管理しているからね。賞与とか優遇とかいろいろとね」

「そういうことです。あと、本都や他の島からも留学として来たりもしているんですよ?知らなかったのですか?」

「…すみません」

「まあ、君の仕事は人間以外の、神怪を担当としている研修生だからね」

「おや、まだ研修生だったのですか?あなたと出会ってもう10年近くになるというのに」

「すみません。あの後、試験に数回落ちたもので…って?」


 え、どうして山菱菊梨は俺のことを10年近くも前から知っているんだ?


 だって、初めて会ったのはここにきて最初の年で、そこからそんなには経っていないはずだ。なのに、どうして?


「そういえば、元島長から、こんな質問を投げかけられたことがありましてよ」

 そういうと、彼女は今までの話を一気に切るように、すうっと息を大きく吸って、そしてその質問をぶしつけに話した。


「愛は、本物でしょうか、偽物でしょうか」


「おっと、これは難しい質問だね」

「そうですね」

「…ん?何を言っているのかよく分からんのですけれども」

「意志は偽物で、意思は本物と言ったら…ってわからんよなあ」

「そうですね。明確に言ってもらわないと」

「では、私から説明させていただきます」


 茉釣さんは偶然そこにあった切り株へ、山菱菊梨は自ら作った小山の上に体育座りをして、話を聞く姿勢を作った。


「たとえば、いつもやっている書類整理において、予算書というものがありますよね?」

「うん。いつもそれに頭を抱えているよ」

「意外と神怪の警備とかって経費かかるもんな」

「でも、それを自分のために、というか自分で勝手に数字を変えたらだめですよね?」

「そりゃあそうだよ。こういった経費は、住民からお金をもらっているのだから、勝手にしかも自分の為に数字を動かしたりしてはいけないよ」

「そうですよね。そういった書類は、全て偽物になってしまいます」

「なるほど…」


「そこから、故意的にあるいは恋的に相手や物を動かしてしまうというのは、全てにおいて偽物ではないかという考えに至るわけです」

「…つまり、自分の志に、好きなように沿うように動かすということは、誰かを意図的に動かすということになり、それが偽物だということ?」

「そういうことです。自ら湧き出た思いが本物とするのであれば、誰かの行いで湧き出た思いは偽物ではないか、というのが葉長さんの考えです」


「恋の駆け引きというのが、よく分かる例ですわ」

「果たして、それは自ら好きになったのか。あるいは、好きになれという異性からの思いがその人をそうさせているのか。とまあ、そんな感じだな。


「なるほど…」


 言ってみたはいいものの、実はあまりよく分かっていない。


「とにもかくにも、それを理由にいろいろ深く考えすぎた結果、結婚に対するハードルが少しずつ、しっかりと上がっていったということになりますわ」

 まったく、愚かでなりませんわ。


 吐き捨てるように呟いた彼女は、私はそうではないと言わんばかりにその露になっている胸を張っていた。


「私は、たいていは偽物だと思うよ」

「私は、本当の最初は本物だと思いますけれど」

「なるほど、では薮坂君は?」

「…よく分からんです」


「そうだよね、学生時代もそうやって、いろいろはぐらかしていたもんね」

「いろいろって、へ?学生時代を、どうして知っているんですか?」

「そりゃだって、…あれ?」

「え?」

「知らなかったっけ?」

「え?」

「知っていたと思って言わなかったのですけれど…」

「え?」


「私は、本都生まれの本都育ち。男性を愛さず、少女を愛した、元教師。これで、分かりますか?」

「…?」


「鈍いというか、馬鹿というか、愚かでなりませんわ。菊菱梨華ですよ?」

「え、…え?先生⁈」

「まじかよ、お前神怪担当だったでしょうが薮坂」

「仕事怠慢ですね」

「怠慢じゃねえよ!だって、山菱の情報は女性のような妖艶な姿をしているとしか書いていないし」


「色々な状況から察せられないと、研修生からは、のし上がれないなあ」

 当時の風貌からは何一つとして重ならない彼女に、ただ呆然とするしかなかった。


 …えー。対処し辛え。


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