くくりヴァーテックス 身も心も安らぐ橘の香
本都に戻ると、天気は途端に息を吹き返し、満天の星空が私を迎えてくださりましたわ。
「ふわあ。少し、疲れましたわね。」
背筋を伸ばし、少し欠伸をしたら、周りの視線が私の元に集中しましたわ。
さすが、私。男女問わず、魅了できてしまうとは、神怪の素質はありそうですわね。
「さあ、お家に帰りましょうか」
結局、準備することは何もなくなってしまったので、ゆっくり帰るとしましょうか。
今までにない未知の体験というか、もう誰も経験しないであろう事柄に、少し疲れてしまいましたわ。お風呂も沸かして、お布団が気持ちよさそうな外気温ですし、きっと良い眠りにつけるでしょうね。
歩いていると、やっぱり男女半々くらいに町はにぎわっていて、それが普通だと言わんばかりに酒の香りと店の明かりが色鮮やかにこの町を如実に表していますわ。
「お、姉ちゃん?どうよ、一杯やってかね?」
「お誘いありがとうございます。しかし、用事がありまして」
おじさん、お兄さん関係なく、男の人は好みではないので、こういうナンパはうざったい以上の感情は抱けませんね。
「え、そうなの?うーん、じゃあ、しょうがねえな」
「何やってるんすか、お客さん?」
「ああ、いや、ナンパ失敗しちまった。てへ」
「てへ、じゃないですよ!あんたもう50でしょ!」
「いやいや、余りにも美人なもので。ついな」
「本当にすみません。って」
あらま、これはこれは。誰かと思えば、うちのクラスの薮坂君ではございませんか。
「あれ、先生?」
「あら、こんばんは」
「ああ、こんばんは。どうしたんですか?こんな夜遅くに」
「それは、こちらのセリフですわ。バイトは禁止ですよ?」
「あ、これは…その」
「まあ、しょうがないですわね。今日は見なかったことにします」
何か、のっぴきならない事情がありそうですし。特に興味もありませんし。
「あ、ありがとうございます」
「その代わり、明日はちゃんと学校に来なさいよ」
「は、はい」
「じゃあ、帰りますね」
「お仕事、お疲れ様です」
「そのままで学校にいたら、そこまで嫌われないでしょうに」
「そ、そうっすね。頑張ろうかな」
「頑張りなさい。じゃあね」
「さようなら」
疲れて痛めた足を、ゆっくりと前に出しながら、ようやく私の家に着きましたわ。
「はあ。」
玄関に入って、靴を脱ぐ際、思わず座ってしまいました。
一度座ってしまうと、もう一度立ち上がるのは至難の業ですよね。この感覚は、皆さんお持ちでいると思いますわ。
立ち上がることなく、地を這ってお風呂場まで行きます。まるで、蛇のように。あるいは、芋虫のように。グダグダしても怒られないのが、一人暮らしの特権ですわね。
「よいしょっと」
ここで、ダラダラ蛇とはおさらばです。文字通りの重い腰を上げ、スイッチを押します。
ついでに洗濯機に服をいれて、スイッチを入れます。
家は、自動で暖房が付くという、最先端の技術を採用していますので、部屋はとても暖かいのです。家の中では、皆無防備だと聞いたことがあります。子供のころははしたないと怒られたものですが、よくよく考えてみると、服を着ながら料理等の家事を行うというのは、リスキーなことではありませんか?汚れてしまう危険性がありますわ。
「さて、何から始めましょうか」
掃除をするには、その体力は残っておりませんので、となると選択肢はなく。料理を作ることにしましたわ。結局それすらも疲れてしまって、冷凍食品をふんだんに活用してしまったのですが、最近の冷凍食品は様々な方向に進化を遂げていますので、安心して食べることができます。
お風呂が沸いた音を聞いたのとほぼ同時に、食事も終え、時計は20時を過ぎていました。
夜更かしは美容の大敵ともいいます。私はいつも、特に祝日は21時半ぐらいには寝るようにしているので、なるべくお風呂に入ってすぐ寝たいのですわ。
ということで、やらなければならない様々なことを、ものの数分ですべて終わらせて、ゆっくりと浸かることが出来ましたわ。
30分ほど、体を洗って少し歌を歌って、体を温めて、お風呂から出ました。
このすごく気持ち良い状態で、もう寝ようと思いますわ。
ふかふかの毛布に柔らかい布団。もふもふの抱き枕で、身も心も落ち着きますわ。
それでは、おやすみです。




