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神怪だって、人間です!!  作者: サツマイモ
前日譚・薮坂足助編
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やぶさかレコレクション 其の中

 常識を超えた勉強家は、それが例え悪いことではなかったとしても、偉人とはみなされない。偉人ではなくて、異人。

 だからこそ彼女は、人外の神怪として、見られている。それは、水神家もヘスティアも同じこと。行き過ぎた行為で、度が過ぎた行動をすれば同じ人間として見てくれなくなるのだ。


「そうそう。」


 そう言うと、羽天は部屋の隅に置かれていたあるラバ村敷物を手に取って、意外にも雑に俺たちが使っていたテーブルに投げた。


「ん?なになに?どういうことなのかな?」


 表紙を見ると、congratulationと年数が書いてあった。


「想像するに、これは、卒業アルバムってやつだな?」

「何でそんなに緊張しているの?ただの、卒アルでしょ?」


 どうしてそんなに緊張しているかと言われると、なかなか答えが見つからないというのが、この俺の頭の回転速度を物語っている。

 …だって、気になるじゃん。羽天の学生時代とか。あと、神那ちゃんも三波ちゃんも、同級生だったと記憶しているし。


「いやぁ、たまたま部屋の掃除していたら出てきてさあ。見る?」

「見な・・・い。」

「いいの?要らないから、もう燃やしちゃうけど。」

「…見る。」

「素直でよろしい。」


 為されるがままに、ページを開いてもらった。


「それにしても、懐かしいなぁ。あ、これ三波ちゃん。」

 指差した先には、もうまさに『田舎の美女』と言ったような見事に可愛らしい女の子の写真だった。

「へえ。可愛いなぁ。」

「でしょ!」

「あ、こっちが私。」


 比べることは不毛であり、むしろ失礼だし、最もやってはいけないことの一つであるが、やっぱりこいつは子供のころから美しかった。


「それで、これが神那ちゃん。」

「へえ、同じクラスだったんだな。」


 実を言うと、羽天が三波ちゃんを指差す前にはすでに見つけていた。別に特徴的な顔立ちというわけではないし、むしろ周りより少し可愛いくらいで、多分学校でもそこまで有名だったわけではないのだろうが、その写真はいつものように、少しだけむすっとしていてそれでいて怒っている雰囲気を醸し出さない、笑顔はあまり見せない、いわゆるクールビューティーというやつだ。

 可愛いというより、綺麗の方が褒め言葉として似合う、そんな少女だ。


「そうそう、このころよく言われたんだよ。天才の飛涼と努力の神那ってね。」

 そういえば、彼女の人間時代の名は、天羽飛涼だった。

「足助君って宿題どうしてた?」

「え、それは…」


 答えを写していたなんて言えない。

 学校でやっていたなんて言えない。


「まあ、どうせ家で答えを写すか、朝学校で友達に貸してもらっていたんだと推測できるけどね。」

 きっちりと見抜かれていた。


「私は、もちろんそんなものやらなくてもできるんだけど。」


 自分褒めを挟みながら彼女は続けた。まったくこいつは、そんなことをしているから友達が出来なかったんだよと釘を刺してやりたい。


「その点、神那ちゃんはその逆を行っていたね。宿題を学校で終わらせるからね、彼女は。」


 宿題というのは、基本的に家で行う、すなわち自宅学習の一環として課されるものであるにもかかわらず、彼女はそれを家に帰る前にやり遂げたのだとのこと。


 恐るべし、神那ちゃん。


「それが、あの異名の由来みたいなところがあるんだとか。三波ちゃんが言ってた。」


 確かに、そのエピソードがあれば、その異名も納得が行く。まあ、そのエピソードがなくとも、普段の行いを見ていればそれなりに分からんでもなかったが。


 パラパラとページをめくる彼女の瞳は、楽しそうだった。思い出を思い返すのは、やはり楽しいものなのか。


「あ、これこれ。」


 見せてきたのは、運動会らしき写真。この島一番の運動場を貸切にして行われるという、学校行事の一二を争うビッグイベントだ。


「私は、スポーツもそつなくこなせるんだけど。」

 また、自分褒めが挟まってきた。

「この時は、神那ちゃんに負けたんだよなあ。」

 普段の神那ちゃんからは想像もつかない事実に、少したじろいだ。


 …あれ、運動得意だったかな?


「いやいや、最初の練習では、私がダントツで勝っていたんだけど、それが悔しかったらしく、当日前まで島長と特訓していたんだって。そしたら、負けちゃったんだよね。」

 外国人みたいに手を伸ばし、完敗だったねと漏らす。


「あ、それでね。これが…合唱コンクールだったかな。」

 学校行事で一二を争うと言ったが、運動会と同じくらいにビッグイベントなのがこの合唱コンクールなのだとか。


「三波ちゃんの歌声は、素晴らしいものだよ。タイミングがあればぜひ一度頼んでみて。本当に綺麗だから。」

 そう言うと彼女は、その歌声のことに関して、延々と話し始めた。


 時間にして、30分。


 内容を割愛しながら、かいつまんで要約すると、クリアな声でも一筋しっかりとした軸があって、それがまた黄金比率で、天高くまで届きそうな肺活量にして、それでいて奥が深く、とにかく美しかったそうな。途中から、何か別の言語を話し始めたのでその辺の翻訳はできなかったが、要はそういうことらしい。


 煌びやかで、おしとやかで、落ち着いていて、麗らかで、美しい。

 そんな事を言っていた。


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