みつはミラクル 決断の水。
「では、ここからが本題です。茉釣さん、私たちにどうしてほしいのか話してくださいな。」
吉備団子を要求しているかのような手つきですが、彼女はいたって真面目です。ええ、真面目ですとも。こういうフォローされている時点で、惨めとも言えますが。
「こういうのって緊張するな。いつも頼る側じゃなくて、頼られる側だったから。」
苦笑いを浮かべる茉釣さんの顔は、すぐに真剣そのものへと変化していった。
ぎゅっと手に力を入れ、すっと力を抜く。
「もう、陸奥家は正気を保ててないんだ。それもそうだろう。自分の娘たちが、次々とこんな目に遭っている。何か悪いことをしたわけでもなく、何かを怠ったわけではない。にもかかわらず、ひどい目に遭う。そんなの、正気を保てるはずもないだろう。でも、」
そう言うと、茉釣さんはこちらを鋭い眼差しで見つめました。
磊々落々の茉釣さんから想像もできない目で、少し驚きましたが、事情が事情です。リラックスとも少し違いますが、落ち着いて聞かなければなりません。
「お父さんは、何とか私に、言ってくれたんだ。
『どちらか一方で構いません。私たちの娘を、助けてくれませんか』って。その時さあ、この家族には、この家族の幸せがあったろうに、どうして、二人を助けるっていう選択肢が与えられねえのかなって、理不尽だよちくしょうって思った。」
「じゃあ、お姉さんを助ける方向で」
「そうなんだけど、普通に考えたらそうなんだけど、だがなぁ。」
「優柔不断だな、意外と。」
「羽天さん!」
「自分の…娘じゃないんだよ。彼女たちの人生は、彼女たちの人生だし、他人が勝手にどうこう言うことじゃないだろう?」
「それ、本気で言ってるんですか?」
「だいたい、自分の娘もロクに育てられなかったやつが、決めてもいいのかなって。やっぱり、優柔不断なんだな。最低だよな。」
「それ、マジで言ってるのか?」
「じゃあ、見殺しにするんですか?」
「そういうわけじゃねえけど…」
「少なくとも、あなたは関係者です。いじめ問題でも言うじゃないですか、傍観者も加害者だって。」
「あれさすがにひどいよな、私関係ないっていう態度取ってると怒られるんだぜ。」
「少し話が逸れましたが、つまり茉釣さんは、決める権利があります。というか、義務があるのです。」
「つまりまつりって言ったか今?」
「少し黙ってください。」
「すんません。」
「では、あなたは茉釣さんはお医者さんの気持ちを踏みにじるんですか?お父さんの気持ちを無下にするんですか?そして何より」
姉妹を、助けたいと思わないんですか?
心の叫びを、いつも間にか声に出してしまったというのは初めてで、少し恥ずかしさがあるものの、だからと言って間違ったことは断じて言っていない。そう思っています。
「思っているなら、それでいいんですよ。誰も、あなたを責める人なんていません。助けたいって言ってくれればいいんですよ。」
「…そうだな。私は、あの子たちを、助けたい。」
「承知いたしました!やるからには、成功率100%ですよ。」
「あ、言っておくけど死人を生き返らせるとかはできないからな?」
「ああ、分かっているよ羽天。」
「では、向かいましょう。」
「…本当に、できるのか?」
「誰に聞いてるんですか?神様、ですよ。」
「天使だけどな。」
「では、羽天さんは柚希さんのケアを頼みます。」
「合点承知!」
茉釣さんは、ポケットから何かを取り出します。
ああ、携帯電話と呼ばれるやつですね。
「もしもし、茂雄か?」
「ええ、そうですけど。」
「まだ瑞希ちゃん死んでねえよな?」
「うん、まあそうですね。ここしばらくは大きな異変もありませんけど」
「よし、じゃあ、ぜってえ殺すなよ。」
「いや、そう言われましても…」
「医者だろ、お前!」
「ひいっ、わ、分かりました。」
「じゃあ、切るから。」
思いっきり切る茉釣さんは、まさに今まで通りの茉釣さんです。
「あんたたちも、車乗んなさい。」
「え、でも車って…」
「今回は特別。詳しくは見ないこと、帰ったら、忘れなさい。」
「わ、分かったからナイフを突きつけないで、もらえるかな。」
「ロクなことしませんね。」
「ありがとう、一応プラチナリーフの元リーダーだからね。」
「…はは。」
「じゃあ、しっかり捕まりな。」




