みつはミラクル 近づく水。
打って変わって島では、論争が繰り広げられていた。
「助けられるってどういうことだよ?」
「脳の移植さ。」
「脳?そんなの、できるのか?まだ臨床段階ではないが、可能性は無きにしも非ず、5%と言ったところだな。」
「待て、じゃあ、もし成功したら。」
「脳は、三女。体は、次女となるな。」
「そんな事、できっこないだろ。」
「だからこそ、神怪の助けが欲しいんだ。
もしも、この移植が成功したら、誰も知ることがなかったあの神怪の正体が分かるかもしれないんだぞ。」
「だからって、実験みたいなこと。マウスじゃねえんだぞ。」
「そんなことは、百も承知だ。でも、俺だってつらいんだ。だんだん記憶を失っていく次女と、助けるために犠牲になりかける三女、それを黙って見るしかなない長女。こんなに辛くてきつい状況初めてなんだ。見過ごすわけには、見殺しにするわけには、いかないだろ?」
「…。」
「そのためには、君の承諾が必要なんだ。」
――――――
こちらも負けじと、情報の開示が少しずつ、着実に行われている。
「妹の…為?」
「知ってる?あの山に生える、小さな花を。」
「いや…分からない。」
「黄泉の花、っていうの。綺麗で、華麗で、麗しい。誰もが認める赤。黒よりもはっきりした、青よりも艶やかな赤。手に入れると、一人生き返らせることができる。そんな花が、山にあると言われてる。」
「そうだったのか…ん?でも、あの山って立ち入り禁止だぞ?」
「あの子は、巷説とか塗説とか、噂話って言うの?いわゆる都市伝説を信じやすい子なんだよね。」
まだ彼女は幼い。これがもしも、大人の過ちなら大馬鹿者の一言で済むが、そんなことを言えるわけがない。姉の為を想って一生懸命歩いて山まで行ったのだそんな子に、厳しいことなんて言えない。
「だから、僕も初めて聞いた時意味が分からなかったよ。」
体には一つも傷跡がないのに、内臓が全て無くなっているだなんて。
言われたところで、こいつは何を言ってるんだとしか思わなかったよ。だって、見舞いに行っても、見た目は何ともないんだよ。普通の女子中学生。なのに、内臓がないなんて言われても。
「何と言ったらいいか…」
その食べ方には、聞き覚えがないわけではなかった。しっかりと伝えられてはいるのだが、何というか気味が悪い。
気持ちが悪い。
吐き気がする。
虫唾が走る。
身の毛が弥立つ。
だから、正直忘れたい記憶の部類ではあるのだ。
だってこんなの覚えたくもないよ。
内臓だけを食べる神怪。
ココナツの液体だけを飲むような食べ方をする妖怪。
蟹のみそだけを食べるようにして食べる怪物。
『筋肉は少なくて古臭いですし、骨は固くて食べれたものではありませんわ、脳みそは子供なら美味なんですけど、大人だと苦いですわね。ああ、でも美味しかった大人もいましたね。名前は存じ上げませんが、神那ちゃんだけは…とかなんとか申していましたか。』
俺の目の前で、住人を食って平然と言ってのけた、食物連鎖の頂点。
「神怪に詳しいんでしょ。助けて…くれないかな。」
史上初の涙と、つながりあう事実に、動揺は隠せなかった。




