みつはヘルプ 感謝の水。
「さて、私も探さなきゃ。」
重箱の隅を楊枝で洗うように、細かいところまでしっかりと見ていきましたが、妹は見つかりません。だんだん、イライラが募ります。いけません!
そうこうしているあいだに、叫び声がしました。まださっきの会話でしか聞いたことがないはずの声が、なぜか完全にその人だと確信させました。
もしかすると、朝だから他の人の声がしないというのがあるかもしれません。
もしかすると、男の人の叫び声に慣れていないからこじつけているのかもしれません。
でも、私はその声に、恐怖は感じませんでした。
「いたぞお!!!!」
聞こえた瞬間、私は何も考えずに、聞こえた方向に体を動かします。何を言うか、どうやって諭すか、なんと叱るか、そんなことも一切考えずに。単純に嬉しかったというのも相まって、私の目は足を動かすたびに潤んでいきました。急いで目を擦って向かいます。
そこには、傷だらけの少女と、泥だらけの男の人がいました。
「あーぶなかった…ふう。」
無邪気な笑顔を見ている暇もなく、私は泉咲の方へ詰め寄ります。
「…どうしていなくなったりしたの?心配するでしょう?」
気をつけていたはずの声量は、不思議と大きくなるばかりでした。
「…ごめんなさい。」
「ま、まあ、謝っているんだし…」
「よくありません!!ねえ、お姉ちゃんは心配だったんだよ!」
「オッケー、分かった。お姉ちゃん、ここは俺に任せてくれませんか?」
「え…?」
「この子、凄く反省しているみたいだから。ね。」
「わ、分かりました。」
「ねえ、ええと、泉咲ちゃんだっけ?」
「は、はい。」
「どうして、家を出ちゃったのかな?」
「それは…」
「いいよ、ゆっくりでいいから。」
「きれいな・・・お花が。」
「…お花?」
「さいてたの。」
「そっかあ。それを、取ろうとして。あんなことにね。」
「ごめんなさい。」
「大丈夫だよ。でもね、お家を出るときは、きちんとお姉さんに言わないと今日みたいに、怒られちゃうからね。気をつけてね。」
「うん。」
見事なまでに完璧な段取りで、言葉を失いました。妹にとってのヒーローになってくれた彼は、私にとっての先生になりました。諭しのプロですね。
「あ、あの。」
「どうしました?」
もしかすると、彼だったら。そんな妄想をしてしまうほど、虜になってしまいました。いや、自分でも怖いくらいに詐欺に引っかかりやすいタイプですね。
「子どもの世話とか、どうやって勉強したんですか?」
「いやあ、勉強というか…。実際の妹、弟はいなかったけど、そういう奴が多かったからね。」
「ぜひ、教えて頂けませんか?」
「…俺でよければ。」
この日があったおかげで、それからの総回診がただの仕事から、一つの立派な、楽しいイベントになりました。
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「えー、ではこれで講習会は以上となります。」
丁度ぴったり終わりましたね。さあ、帰りましょうか。
頼りがちになってしまうのも、あまり良くはないので、急いで帰ります。
役場に着くと、誰もいませんでした。
「あれれ…」
少し廊下を歩くと、部屋があるのが見受けられます。ドアを開けて、中を見ると、そこにはあの日とは違った景色が広がります。奈波はもちろん、泉咲もいて、そして薮坂さんもいた。…あの、薮坂さん。そんな風に寝ていると、あまりいい気分はしないんですけど。
妹を抱き枕にしないでください。
起こそうかどうか迷っている間に、神那ちゃんが帰ってきました。
「足助さん‼何をしているんですか‼」
久々に見ました、あんな顔。
役場で楽しくしているなら、何よりです。




