すずかぜビジター 感動の再会
幼いころから勉強が―当時は勉強だなんて全く思っていなかったけど―大好きだった私は、もともと才能があったらしく、才能に努力が加わって誰も追いつけない境地に達していたようだ。その証拠に、学生時代に神那ちゃんから「ウザいほど勉強できますね。」と皮肉を毒舌で包んだような言葉で、否直球で言われたことがある。私からすれば、なんてこともないのだ。
小さいころからそういう風にやってきたし、みんなも私みたいに毎日本を読んだり、ノートにまとめたり、親にプレゼン方式で発表したりすれば、私なんて比にならないくらいに頭良くなるはずと思うのだが、皆全然やってこない。そんなことするから、馬鹿になるんだと苦言を呈したくなる。制限なしに、提言したくなる。勉強しろよと。
自分が出来ないことに対して、尊敬の目で見ることができる人というのは、凄く心が清らかな人に迷惑をかけないタイプのまさに聖人なんだろうなって学校に行きながら思ってたぜ。まあ、私がされたのは妬みや嫉みや僻みなどといった可愛いものでは全くなかったんだが。
いじめといういじめはなかったものの、皆とはなじめなくなった。下に妹がいて、世話を焼くのが好きな私は、皆が勉強を頑張れるようにと色々と教え方を勉強していたんだけど、全くの無意味だった。
両親はどんどん頭が良くなっていく私を、ついに見捨てた。成長は親の楽しみかもしれないが、進化は恐怖の対象なのだ。妹が小さいころに私を捨てたので、妹に記憶はないだろう。
結局この世の中というのは、ほどほどな奴が一番人生を楽しめる。出る杭は打たれるとは、私の為にあることばだろうと、身に染みていた。だんだん離れていく友達。次第に私からも離れていくようになった。
それは天使になってからも変わらない。ロクに話せるのは三波ちゃんくらいなもので、神那ちゃんともうまくいってない。うわべだけの会話だけだ。
だけど、この人は。
「…ははっ。はははっ。面白い人なんですね、羽天さんって。」
「…ひどいな。人がせっかく一晩考えぬいたのに。」
「え?!一晩かけたんですか⁈」
もちろん嘘だ。そんなのさっき考えたに決まっている。
「いいよ、敬語は。名前も、羽天でいい。あと、名前なんて言うんだっけ?」
「薮坂足助です!」
もちろん、相手方の方が年は上だ。
「じゃあ、入りな。今日はハンバーグを用意した。」
このなんというか、刑務官役みたいな口調になっているのは、照れ隠しの一種だと思ってくだされ。
だって、久しぶりに人の何の臆面もない笑顔を見れたんだもん。愛想笑いでも苦笑いでもほくそ笑みでも嘲笑いでもない、笑顔が見れたんだ。もう何年も、否初めてこんな顔が見られた。それだけで嬉しい。
もっと仲良くなりたいな。悪戯したら、どんな顔を見せてくれるだろうか。
緊張しっぱなしでちゃんと話はできなかったけど、気分は最高潮だった。
薮坂足助が帰った後、私は悪戯を考える。結構派手で、なおかつ被害は少なめ。怒られてしまえば、本末転倒だ。笑いながら、やめろよって言ってくれるくらいがちょうどいい。
実行日を一か月後に決め、今日は寝た。
もしかすると、仲良くできるかもしれない。そんな期待を胸に、熟睡する。
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ついに、決戦の朝を迎える。仕事が多い今日は、すこし人間界にお邪魔する。いけない行為ではあるけれど、それくらいの冒険はしなきゃ悪戯じゃない。
家に帰ると、もう二人が目の前まで来ていた…二人?あ、あれは神那ちゃんではないか‼
「どうして私が来なきゃいけないんですか。」
「仲良くしてほしいんだよ。羽天とも。」
まあ、二人で来ようが私には関係のないことだ。これを機に、仲良くなれるかもしれない。
「おーい、羽天!」
今日の悪戯は、楽しんでくれるかな。
そんな期待を胸に、私は返事をする。
「はいはーい!」




