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神怪だって、人間です!!  作者: サツマイモ
植物の核・茅野咲姫・恙蒼葉編
21/140

つつがなプロポーズ 開花編

――――――――

「先輩、まだ言ってなかったんですか⁈」

「あの、その顔で近づかないで。あなたが今どんな能力を持っているか忘れちゃったんですか?…もう。何言ってるの?ファーストキスを彼から奪っておいて、後輩ちゃん。」

「それは、その。」

「別に、そのことは怒ってないし、気にしてもいないわ。だからね、ちゃんと自分の気持ちに正直になった方が良いわよ。」

「でも、それじゃあ、先輩は?何のために、神怪になったというのですか⁈」

「そうねえ、でも今この時が幸せだから。毎週のように会えるし、暇さえあれば来てくれるし、今日だって遊びに来てくれたのよ。」

「そう・・・ですか。」


「あ、でも早いうちにちゃんと伝えないとだめよ?今の神怪みんな女の子だし、専門家も先代の孫娘みたいだし。」

「そうですね。」

「うん、神怪の世界も男女平等になったものですわ。昔だったらあり得ませんから。私がなった時も、周りの神怪からいびられましたからね。」

「え、先輩いびられてたんですか?」

「ええ、もちろん。女のくせに神怪になるなどわがままだ、とか。女にこの仕事の何ができるんだ、とか。重労働も最初は多かったから。」

「神怪の世界にも男女差別ってあるんですね。」

「それに、時代はアナログだったので、もっと大変でしたよ。私が作り上げた今のシステムも、最初は反対を食らいましたし。デジタルに対応しない人たちっているでしょ?」

「そういう社会に苦言を呈すところも相変わらずですね。とても、ご令嬢とは思えないですよ。」

「もう、やめてくださる。私はもう、ご令嬢でも先輩でもないんですよ。一人の神怪です。神怪を一人と数えるのかどうか微妙ですが。」

「確かに、そうですね。」


「この砦だって、別に欲しいとは言ってないですからね?」

「え、そうなんですか?」

「はい、確かに家はほしいと言いましたけど、家ですよ、家。そしたら、こんなに大きな砦が出来ちゃってて。断るわけにもいかなくて。」

「そうだったんですね。」

「そうだ、うちに住まない?」

「それは、うれしいお話なんですけど。嬉しすぎて今すぐにでも荷物をまとめてこちらに移りたいぐらいなんですけど。本都での仕事がありますし。」

「まあ、ほっぽりだしちゃった私が言うのもなんだけど、楽しい?」

「楽しいかと楽しくないかと言われれば楽しくはないです。でも、だいぶ慣れましたね。一番やっちゃいけないというのは慣れではなく馴れ合いとも言いますけど、馴れ合いになるような相手もいないので。仕事自体は順調ですよ。」

「そう、なら良かった。じゃあ、今日は旅行みたいなものですわね。」

「そうですけど、それよりも大事なことがありますから。というか、先輩も知ってなきゃおかしいですよ?」


「え、何かありましたっけ?」

「そういう、興味のないことはあっさり抜け落ちている感じさすがですね。」

「え、意地悪言わないで教えてくださいよ。」

「神怪総会議じゃないですか。」

「ああ、あれですか。あれ、今年もキャンセルで。」

「またそうやって、私がなる前もキャンセルしてたらしいじゃないですか。引き継ぎするとき漏らしていましたよ。」

「だって、めんどくさいんですもん。」

「もんって子供じゃないんですから。」

「じゃあ、まじめに出てあげるから、一つ条件ね。」

「何ですか?」

「真面目に告白しなさい。」

「…はあ⁈」

「あなたのことだから、まじめに言わずに冗談めかして言っていたんでしょう。大丈夫よ、あなたは可愛いんだし。」


未来を見据えた真っ直ぐな瞳。

人の話を親身になって聞く耳。

周りの人を笑顔にしていく声。

艶やかで煌びやかで美しい髪。

どこの一つをとっても断る要素なんてないもの。

ああ、美しいわ。とても、とても美しい。

私のものにしちゃいたいくらい。ああ、どうしてこんなにも美しいの?


「あ、あの…先輩?」

「え、ああ、ごめんなさいね。あなたと話しているとすっかり正気を取り戻せなくなるわ。」

「いや、でも。」

「何?もう好きじゃないの?」

「いえ、そういうわけではないですけど。」

「即答じゃない。何がそんなに嫌なの?躊躇しちゃうの?」

「だって、彼、結婚…というか、そもそも付き合う気もないそうですし。」

「…そう。じゃあ仕方ないわね。」

「え?」

「やる気がないなら仕方がないってことよ。じゃあ、会議は参加しないから。」

「…。」

「その不満そうな顔は何なの?私だってそろそろ怒るわよ。」

「すみません。」

「ああ、もう。すみませんじゃなくて。じゃあ、今から励ますから、それなら良い?」

「え、励ますって?」


大きく息を吸って、思いをぶちまける。

自分の、彼への想いと共に。

そうだ、あの時はまだ学生だったっけ。

可愛かったなあ。この子と共に生きてくれたら、本都に戻ってもいいかな。

思い出も、思い入れもすべて完了を迎える。終了をお知らせする。ここから始まる彼と私とこの子の別々の物語。思い残したことは何もない。思い上がりでもいい、思い違いでもいい。彼が、この子を好きなら、少しでも気があるなら。賭けるチャンスはあるはず。

さあ、全てをぶつけてきなさい。


「初めての気持ちなら。真面目な気持ちなら。

「苛められても、惨めでも。

「決めたなら、定めたならば。

「諦めずに、けじめをつけて。

「進め。」


この子の心に響いたかどうかは分からない。でも、この子の瞳は確かに潤っていたし、決心したような握りこぶしを作っていた。きっとようやく踏み出せたのでしょうね。

「分かりました。じゃあ、私が告白したら、プロポーズしたら、」

「ええ、会議に出ますわ。それにしても、どうしてそんなに会議に出させたいのです?」

「え、だってあなたがいないと不安ですし。まだまだおじさんばかりで怖いんですよ。それに、」

「それに?」

「今回の司会は、薮坂足助君ですから。」

「ああ、そんなこと。」

「あれ、そうでもないですか?」

「まあ、そうですね。少しくらいは、嬉しいですかね。」


よし、これで決着がつく。私の物語は第3章に突入する。

あなたと出会い。

あなたと過ごし。

あなたと別れる。

起承転結なら、転の場面。こんな展開、あなたは驚くでしょうか。

「じゃあ、行ってきます。」

随分、逞しくなったものね。

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