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神怪だって、人間です!!  作者: サツマイモ
植物の核・茅野咲姫・恙蒼葉編
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つつがなプロポーズ 成長編

「あ、ここなんじゃない?」

「ああ。」

 指さす先には、何度見ても嘆息がでるほど立派な砦があった。


 …あれ?何で入れるんだこいつ。

 水神神社には神怪と人間との境界線との役割があり、それはいわば結界が張られていうようなもので、人間は入れるはずもないのだが。あ、そういえば茅野咲姫が三波ちゃんに頼みごとをしていたような…じゃあ、三波ちゃん達もこの砦にいるのかな?それで手薄になって入れたのか。


「じゃあ、お邪魔するか。」

「しーつれーいしまーす。」

「あ、こん…に…ち、え?」

 やはり予想通り三波ちゃんがそこにはいた。どうやら電球の取り換えに来ていたようだ。

「ど、どうして、あなたが。」

 動揺の仕方が普段と全く違うというのは火を見るよりも明らかだったが、どうしてそこまで動揺しているのか全く分からなかった。

「知り合いなのか?」

「い、いえ。知り合いではない…ですけど、神那ちゃんと一緒に調べたことがあって。」

「調べた?どうしてまた、こんな一般人を?」

「それは、後で。」

「やぶっちの見ている世界が、意識や見識が正しいとは限らないってことだよ。」

「…ん?」

「茅野咲姫と話がしたいんでしょう?」

「お、分かってるじゃないか。行ってもいいのかな?」

「ええ、突き当りを左です。」

「じゃあ、ここからは私一人で行くよ。」

「お、おいさっきのはどういう意味だよ!」

「結構そのまんまの意味なんだけどね。」

「それは、私からお話しします。」

 怪訝な目つきから、事の深刻さは読み取れた。


「初めに言っておきますが、彼女は神怪です。

「これからお話しするのは、魔女裁判が開かれていたころです。

「魔女裁判については追々。

「その事件の要因を探すべく、神那ちゃん、炎香、羽天、そして私で調査をしてました。なにせ人間の命が関わっていたわけですから、ことは急を要していました。人海戦術で虱潰しに調べ、調べ、調べつくした。」


「ついに、真相には辿り着きました。そして、それには対策が必要でした。とても大きな仕事でしたけれど、4人で行うには問題はありませんでした。

「むしろ、問題があったのは本都の方でした。当時、本都は唯一神でした。その神の地位に立っていたのが、茅野咲姫です。彼女の人気は絶大で、今でいうところのアイドル的な存在でした。そのため、彼女をこの島に連れてくるとなると、代わりを探さなければならなくなります。その仕事を、私たちはすることができませんでした。本都での調査も検証も捜索も確認も申請も承諾も、全てを怠りました。

「今思えば、とても申し訳ないことをしたと思います。アフターフォローと言うのはすごく大切なものです。終わり良ければ全て良しと言うつもりはありませんが、終わり悪ければすべて台無しです。

「この後罰が当たるのですが。

「交渉の末茅野咲姫を連れてきた後の本都というのは薮坂さんが一番わかっていると思います。そうです、あの事件の遠因は、原因は。」


「神の不在です。

「やはり、人間という生き物は独りでは生きていけないのです。孤独ほどつらいものはなく、孤独ほど懼れるものはない。一人で生きることを恐れて、友達がいないことを怖れて、独りぼっちを懼れる。

「世の中は荒れ果て、人々はその世界に愕然とします。

「これではまずいと、ある団体が立ち上がります。

「プラチナ・リーフ。合言葉は『人助けはしない、やるのは自助努力。』

「どこかで聞いたことがあるかと思うので、詳細は省きます。彼女らは本都での政治・経済、その他さまざまなライフラインを立て直しました。

「その中で、やはり神様の存在と言うのはないことにはできなかったようで、彼女らは、本都で最も美しい女性を神に据えようとした。

「もちろん、神について何もわかっていないような人は神にはなれません。そのあたりは、チームリーダーが決めていたようですが。」


「彼女らの白羽の矢が立ったのは、矛先を向けたのは、恙蒼葉です。

「スポーツ万能。成績優秀。ピカソも称えるだろう絵を描き、シューベルトも唸るだろう曲を書く。性格は優しく温厚で、皆に好かれていた。同じ学生の間では、彼女に告白しないというのがマナーみたいな、暗黙の了解のようになっていたそうです。

「蒼葉さんは、拒否しました。ただでさえ、今の生活が生き苦しいのに、これ以上崇拝されるのは嫌だと。」


「しかし、ある日突然、承諾しました。何をしたわけでもなく。彼女の中で変わったのでしょう。ついに彼女は、二代目茅野咲姫として、生まれ変わりました。

「今では、すっかり様になっていたので、しっかりフォローもしながら情報交換もして、仲良くしていたんですけどね。

「彼女は感情で動きやすい人です。感情と言うか、人情という。あるいは人とも言えますかね。今回はもしかすると、そういうことなのかもしれません。

「痴情の縺れと言ったら俗っぽいですけど、約束はまだ続いてますからね。結んだ約束は、終わりを宣言しなければ続きますから。それを破ったとなれば、例え数年前の約束でも、怒りますかね。

「約束の内容は、詳しくは知りません。ただ一つだけ、言われているのは。

「薮坂さんが関係しているということです。」


茅葺咲来かやぶきさくらっていう名前、今のうちに思い出しておいてくださいね。」

 そういうと、三波ちゃんは帰ってしまった。


 三波ちゃんに言われて思い出したと言われれば極めて失礼と思われても仕方がないが、やはりそれでも本都での記憶と言うのは自分の中で消えており、否もしかすると片隅にはあるのかもしれないが、結局のところ思い出すことはなかった。


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