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神怪だって、人間です!!  作者: サツマイモ
植物の核・茅野咲姫・恙蒼葉編
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つつがなプロポーズ 発芽編

 そうこうしている間にもう12時を過ぎていた。昼ごはんをどうしようかと考えていると前方から知っている人がダッシュしてきた。

 人間本当に怖いと動けなくなるらしい。

 何の対策を打つこともなく、なし崩し的に突っ込まれた。


「やぶっち、やぶっち!!」

「な、なんすか?」

「本都から聞いたんだけど、小耳に挟んじゃったんだけど!茅野咲姫さんってここにいるの?!」

 本当に彼女はアイドルなんだなと思う瞬間だった。

「えーと、それは」

 この辺って結構曖昧なんだよな…言っちゃってもいいのかな?

「教えてよ!どうせ友達いないから言う人もいないし!ヘスティアちゃんことだって神那ちゃんのことだって知ってるよ?」

 え、そこまで知ってんの⁈神怪についてってあんまり教えちゃいけないと言っていた気がするんだけど。


「じゃあ、いいか。いるよ」

「是非とも会いたいけど、そういうのって駄目なんだよね。神那ちゃんから聞いた」

 少し寂しそうな顔は、雨に打たれた子猫のようだった。

「会うのはだめだけど、遭うのは良いんじゃないか?」

「ん?何を言っているのかね?」

 会長クラスのおじいちゃんのようなものマネがまた一段と可愛いのは置いておこう。

「だから、面会じゃなくて遭遇。」

「ん?」

「君に任せたい仕事があるんだ」

 格好つけて言ったものの、そんな大層なものではなく頼まれたことをそのまま伝えるという、所謂準備体操的な、チュートリアル的な行為であった。

「メイドさんやらないか?」

「はい!是非とも‼」

 誰の、どんな仕事かも聞かずに即答でイエスと答えた。


 即答で答えるというと、頭痛が痛いを思い出す。

「私はチゲ鍋かな。」

「そうかい。」

「それで、メイドさんてどんな仕事するの?」

「さっぱり。聞いておけばよかったのかもしれないけど、教えてくれなさそうだし。」

「そっか。」

「じゃあ、今から行くか?」

「うん、じゃあ準備してくるね。」


 そういうと、彼女は喫茶店に戻っていった。これはあくまでも自分の、何というか推測なのだが、恙蒼葉と茅野咲姫は知り合いのような気がしてならない。何故ならと言えるほどの明確な証拠や根拠はないのだが、後ろ姿とか雰囲気とかの美しさが並大抵のものではないというところが凄く似ている。

 昔に聞いた伝説だが、ある程度の美しさを超えた人間、もとい神怪を目の前にすると、自らの命を授けたくなるということを聞いたことがある。確かに咲姫や蒼葉を見ているとそういう気分になるのも分からなくもない。


 輪廻転生しても、根底の部分は変わらず。

 時間旅行でさえ、意味を成さない。

 そんな美しさが、この国にはあるのだ。


「準備終わったよー!どうかな?」

 その姿に見蕩れない人はおそらくいないだろう。思考回路が停止させられてしまう。溶けて、解けて、蕩けてしまう。にやけが止まらないというと俗っぽいがそれぐらいにとどめておいた方が良いのだろう。

 だってそうでもしないと、おっとこの先は脳みそが整っている今はやめておこう。とりあえず彼女は可愛かった。


「完璧だよ。」

「本当⁈良かった~」

 こうして珈琲店から出てきた蒼葉と共に、店の準備をしていたヘスティアと神那ちゃんに『行ってきます。』とだけ告げ、砦に向かった。


「ねえ、やぶっちはどうしてここに来たの?」

「研修だよ、研修。」

「賢秀?」

「誰だよ、それ!」

「え、知らないの?蒲生賢秀だよ。まあ、読み方は『けんしゅう』じゃなくて『かたひで』だけどね。」

「分かりづらいボケをするな‼」

「ごめんごめん。」

 久しぶりに会う友達と言うのは、気まずいものがある。

「なあ、彼氏とかいるのか?」

「あれ、なになに?もしかして、まだ狙っていたの?」

 にやにやしながら小馬鹿にする態度は、とてもあざとくそれだけでもうオチてしまいそうだがそんなにオチてたら生きてられない。

「良かったね、いないよ。」

「何が良かったなのか俺にはさっぱりだけどな。」

「あ、そう。そういう態度なんだね。ふーん。そうか、そうか。」

「なんだよ、それ。」

「まあまあ。それより、どうなん?彼女、できたんか?」

「どこ弁だよ、語尾グダグダじゃねえか。」

「はよお答えんかい!おるんか、おらへんのか‼」

「だからどこの方言なんだよ!…いないよ。」

「そうかい。」

 いい加減戻ってくんないかな。


「私ね、」

 唐突に話し出したと思ったら、それ以上に低いトーンで驚く。たじろいで、慄いて、戦慄く。


「一人の人を、狙った相手を、落としたことってないんだ。みんなから好かれる術は知っているんだけど、ある特定の人には響かないというか。広く浅くというか。だからね、あの時は本当にうれしかったんだよ。うまくいったってね。なのに、やぶっちは付き合いたいって言わなかった。結婚したいとも言ってくれなかった。ただ、お姫様だって熱弁していたよね。分を弁えて。」


 言葉の端々から感じることから、お姫様だなと、世間を知らない箱入り娘だなと思っていた。井の中の蛙。まあ、俺たちがいた本都に井戸はないんだが。あるのは2つの大きな山。その間の小さな集落。


「言ってほしかったんだ。結婚したいって。そうしたら、私の人生も新しく始まった。あんなニックネームも、賞賛も称賛も礼賛も崇拝も信仰も要らなかった。だから、追いかけてきたんだよ。希望を希い、希望を取り戻すために。」

 …信仰?その言葉に引っかかるようになったのはこの島に来てからだが…まあ、当時の人気ぶりを崇拝とか、信仰とかと表現するのは強ち間違いではないだろう。いやむしろ言い得て妙というか、正確を期している。正鵠を射ている。


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