ともしびレカンシリエーション(Second Encounter)
「なるほどねえ。」
食べていたせんべいを机に置き、茉釣さんは重い腰を上げて一言つぶやく。
「神怪にも、いじめってあるんだな。」
「…そういや、そうですね。そんなもんなの、ヘスティア?」
「いや、その時は私のことだけしか見えなかったから何とも言えないけど。」
「…そっか。それで、そのことに関して謝りたいと。」
「はい。」
「過ちを認め、誤りを正したいと。」
「はい。」
「よく分かった。でも、どうしようか。神那カンカンに怒ってるし。まあ、あいつは可愛いし、ぷんぷんって感じかな?」
「あ、あの…何か、策はないの?」
「策?ないない。知らないよ、私ができることなんてないもん。話が聞きたかっただけだし。え、もしかして助けを求めてたの?だとしたら、申し訳ないけどそう言ってくんないと。」
「え、そうなんですか?」
「うん。え、何?薮坂までそう思ってたの?やだなあ、そんな簡単に人助けするとでも?まあ、神怪だけど。というか、そもそもその問題、ちゃんと考えてる?」
「考えてるって?」
「いやさあ、まあ謝るっていう結論は聞いたよ。動機もね。そこまでは分かった。でもさ、過程がないじゃん。家庭じゃないよ。謝るまでのプロセスを語って、それでアドバイスを求められたら答えられるけど、自分でロクに考えもせずに、人に助けを求めちゃだめだよ。お姉さん、怒っちゃうぞ、ぷんぷん。」
「何でしょうね、茉釣さんがやると、若作りにしか見えないというか。さっき自分でお母さんて言ってたじゃないですか!」
「おやおや、君は喧嘩を売る気かい?機械を使って喧嘩をする機会を窺っているのかい?」
「何ですか、機械って。俺そういうの作れないんでできませんよ。てか、喧嘩は売ってません。事実を言ったまでです。」
「薮坂も、炎香も、私も。現実と言うのは、いかに使えねーポンコツかってのがよく分かる実体験を持ったものだなあ。」
「そんなしょうもないことで、俺はともかく、ヘスティアを一緒くたに括らないでください。」
「えー。しょうもないことって言うなよ。そうやって自分の物差しで測るの、良くないぞ☆」
「自分の物差し?」
「そうだよ、自分の物差し。自分にとってはしょうもないことでも、相手にとっては超重要だったりするってこと。あーそれ、鳥獣用のパンだったのに、どうして捨てちゃうの?みたいな。」
「…?」
「まだ、分からないのか?もしかして、薮坂の脳って、鳥並みか?…はあ。例えが悪かったのか。じゃあ、こういうのは?例えば、趣味で集めていたフィギュアの数々が、ある日お母さんに全部捨てられてたとか。お母さんにとってみれば要らないものだったけど、自分にとっては大切なものだったということだよ。」
「なるほど。最初からそう言ってくれれば。」
その一言が、自分は馬鹿であるということを確定させた。
「じゃあ、私の悩みは、しょうもないことって言うの?」
「少なくとも、私はね。しょうもないというか、どうでもいい。」
「でも、どうすれば?私には、分かんない。」
「そうやって、全て一気にしようとするからそうなるんだよ。だから言ったでしょ、過程が大事。薮坂もそうだけど、全部すっ飛ばすからそうなるの。少しずつ、考えるんだよ。」
「なるほどぉ。じゃあ、やってみる。」
「まあ、早くしないと、帰ってくるんじゃないかな。ほら。」
茉釣さんが指差した先には、失望と絶望が入り混じる顔をした神那ちゃんがいた。
「なんで、お前がいるんだ。」
「いや、これはその、ちゃんと話がしたくて、待って、」
「問答無用。では、消滅の儀を開始します。」
「待って神那ちゃん。まだ早いって!」
「足助君は、彼女の味方をするのですか。」
「そういうわけじゃないけど。話だけでも聞いてあげよう、ね?」
「神那。やめろ。」
「茉釣さん、でも。」
「でもじゃない。もちろんデモクラシーじゃない。私の独断と偏見だ。デモンストレーションをするな。いったん落ち着け。」




