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神怪だって、人間です!!  作者: サツマイモ
学問に可能な限りの愛をこめて
111/140

すずかぜクラス 3月のあれこれpart-last

「え、ああ。先生は、いろはの成績のこと知っていますよね?」

「はい」


「いろはは、小さい頃は何もできなかったんです。というか、何も興味を持たなかったんです。いつだって、ぼうっとしていて、寝ているのか起きているのか分からなかったくらいに」

「そうだったんですか」

「でも、そんな子にも興味がわくものがあった。それが、勉強だった」

「…そんな事って」


「思いますよね。僕もそう思ったんです。でも、彼女は真っ直ぐだった。あおいちゃんの昔話をしっかり聞いて、純粋に勉強し始めた」

「…おう」


「ぐんぐん成長するいろはは、ついに小学生テスト6連覇を達成した」

「す、すごい」


「そのあたりからかな。あおいちゃんが、怖がり始めちゃったのは」

「まあ、そこまで行くと確かに」

「いえ、私は怖がってなんか。ただ、女の子はそこまで勉強しなくてもいいと言っているんです」

「…今の時代、その発言はぎりぎりですな」

「だから、いろはもいろはなりに、お母さんに許しを乞おうとしていた」

「それで、シルバーコレクターに」

「シルバーコレクター?」

「ああ、お父様。こちらの話です」


「まあ、とにかく。それで、いろはとあおいちゃんは、喧嘩中ってわけです」

「…そうなんですか」

「私は、別に。女の子なら、勉強せずとも幸せになれるという話をしているだけ。それを、あの子が勝手に判断しているだけです」

「では、どうしてあなたは、勉強してまで警察官になったのですか?」

「それは、合理的だからです。結婚しなくとも、お金が入るから」

意外や意外、この人結構単純だぞ。現金な人だぞ。


「では、今のあなたは幸せでしょうか?」

「ええと、それは」

「無事警察官になり、偶然にも旦那さんに出会い、二人のお子さんに恵まれ、そしてあなたは今、幸せですか?」

「どうなの、幸せ?」


「…幸せです」


「なら、そんなあなたに、憧れたんじゃないんですか」


少しきついことを言ってしまったようにも思ったが、奇跡的にもお母さまの心に響いたらしく、大粒の涙をこぼした。


「お母様って真面目な方なんですね」

お父様に耳打ちをする。

「そうでしょ、そういうところが好きなんだ」

お父様も耳打ちをする。

「何もお気づきになっていないようですね、お父様は」


「え?」

「お言葉ですけど、多分お父様が甘すぎるんだと思いますよ?」

「甘い?」

「何でもかんでも与えたりしていませんか?」

「え、ええと、それは…」

明後日の方向を見始めた。あーあ、完全にやっちゃってるわ。


「だからこそ、お母様は厳しくなったんだと思いますよ。お勉強しないとだめだって。お父様が甘々なアメなら、お母様はゴリゴリのムチということでしょうね」

「……そうなのか?」

お母様に、今聞く?


「ええ、そうね。そう思っていたわ。でも、まさかこんなに忠実に成長していくとは、少し怖くなってしまったのも、事実だわ」

「そうだったの…言ってくれれば」

「言っても聞かないでしょ、お父様は」

「…返す言葉もございません」


「お子さんは、本当は褒めてほしいんですよ。祝ってほしいと思います。そして、辛かったら励ましてほしいんです。きっと、外には出ない難しい子だとは思います。なにせ、他のことに興味がない子でいらしたのでしょう?なら、なおさら、表に出すのは苦手なのかもしれません」


私にも、そんなような時期があった。

私には、こんなような両親はいなかった。

茶畑いろはには、幸せであってほしい。

私の見えなかった未来を、見てほしい。


「だから、娘さんを大切に、注意深く、見守ってあげてくださいね」

「…分かったよ、先生」

「さしあたっては、卒業式に出席してください」

「……分かりました。ちゃんと、休みを取ります」

「そうですか!なら、良かったです!」


どうやら、うまく行ったようだ。


軽い挨拶をして茶畑家を出ると、これ以上ないほど清々しい気分でいた。


いろはは、喜んでくれるだろうか。

そんなことも考えず、歩き出した。


私らしい、歩き方で。


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