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神怪だって、人間です!!  作者: サツマイモ
悪魔・燈火ヘスティア炎香編
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ともしびレカンシリエーション(Interrogate)

「あ、あの茉釣さんてどうしてこの島の長になったんですか?」

 気まずい空気を換気するための穴をあけてみた。

「う~んと。最初は私じゃなかったんだけどね。島の長は、あそこに写真が飾ってある葉長さん。私ね、等東にいたころ盗人やっていてその時に出会ったのが葉長さん。なかなか大きなチームを指揮していて、そういうところを買われたらしいけど。それで、この島に来たってわけ。」

 なるほど。そんな過去があったとは…。


「それより、お前は?どうしてここに来たの?まさか、愛の逃避行とかいうんじゃないでしょうね?だったらお姉さん、許さないぞ☆」

「べ、別にそういうんじゃない…わけじゃないです。」

「ん?どういうことだい?」

「ごちそうさまでした。」

「おいおい、席たっちゃうの?せっかくこいつの話聞けるのに?」

「いえ、私には関係ないので。」

「へーいいんだ。あーあ、言っちゃおうかなぁ神那が薮坂のこと」

「わーわーわー!それ以上は言わないでください!」

「じゃあ、ここで聞いていきなさい。」

「わ…わかりました。」

 どうして、俺の話を聞く必要があるのかさっぱり分からないし、できることなら話したくもないのだが、こうもノリノリな茉釣さんと、強制的に聞くことになった神那ちゃんの手前、なし崩し的に話す以外の選択肢を消去されてしまった。恐るべし、島長。


「じゃ、じゃあ話します。」

「よし来い!」

 事の顛末を、それはまあ細かく話した。微に入り細を穿って、詳らかに事細かに余すことなく零すことなく話した。

「余すと零すって遠目で見ると字似ているよね。」

「微に入り細を穿っては、ビニールサイを飼ってとも聞こえます。」

「聞こえるか?」

 茉釣さんのはともかく、神那ちゃんのは完全にこじつけだろ。ビニールサイってなんだよ。


「知りませんか?ビニールサイ。ビニール環礁に昔住んでいたと言われるあのサイを?」

「本当っぽいこと言うなよ!多分ビニール環礁ってビキニ環礁のことだろ!」

「え、どうしてわかったんですか?」

「環礁って言われたらそれくらいしか思いつかないし。」

「まあ、そんな感傷的になるなよ、神那。」

 まあ、何とかさっきよりは明るくなって良かった。


「じゃあ、私は喫茶店の準備があるので。何かあればそこに連絡を。」

「分かったよ。」

「ん?喫茶店?神那がやってるのか?」

「そうですよ?茉釣さん、知らなかったんですか?」

「お、なんだいその感じ。私だけ知らない感じ。もしかして、これを機にもう干渉しないでとか言われちゃうのかな?お母さん、寂しいなあ。」

「なんでお母さん目線なんですか。」

「じゃあ、私は観賞させてもらうよ。そして、感賞を授与させるような関係を勧奨するよ。」

「何ですべてを知ったみたいな立ち位置なんですか。そもそも、喫茶店のことも知らなかったんでしょ?」

「そうだよ。つまり私は知らなかったことを知っている。つまり、無知の知というわけだな。」

「何いいこと言った風なんですか。じゃあ、私行ってきますからね。」

 行ってしまった。今度行ってみようかな…コーヒー美味いんだろうな。というか、制服とかもあるんだろうか。フリフリのエプロンで…

「鼻の下が伸びてるぞ。」

「…いえ!伸びてなどおりません!」

「まあ、いいんだけど。それよりさ、無知の知って少し気に食わないよね。知らないことを知っているってドヤ顔されても、結局知らなかったことに変わりはないし。恥じるべきだよね、無知だったことに。」


「まあ、確かにそうですね。」

「あ、ケータイ貸して?」

「え、何でですか?」

「呼ぶためだよ。会って話さなきゃ。会談しなきゃ。」

「ヘスティアですか?」

「他に誰がいるの?涼風?ああ、今は虱涼って言うんだっけ。ほら、さっきの話聞いていたら、昔のことも聞きたくなったでしょ。」

「まあ、そうですけど。でも、もう会うなって言われましたし…」

「別に大丈夫だって。今日は喫茶店で働くんだろう?むしろ好都合じゃないか。」

「分かりました。」

「まあ、私のケータイに履歴を残したくないってのもあるけどね。」

 そんなこったろうと思ったよ。

「ささ、早急にしなきゃ。」

「…あれ?そういえば神怪ってケータイ持っていないはずでは?」

「誰が、ケータイを電話として扱うって言ったの?」

「え、なんでって履歴がどうとかって…」

「それは冗談だよ?まさか本気にしたの?」

 えー。いや本気にするだろ…

「こうやって、それ。」

 当たり前のように、容赦することなく、恙なく用心することもなくそれが当然であるかのように、堂々と、一つの後悔もなく、精一杯に窓からケータイを投げた。

 …俺のケータイなんですけど?


 走って取りに行こうとするも、茉釣さんに止められる。いやいや、あなた何をしたか分かってるんですか?

 すると、堕ちる寸前に飛んできた生命体によって助けられた。うーわ、絶対カラスじゃん。持ってかれたわ…この人にケータイ貸すんじゃなかった。絶対に弁償してもらおう。

 しかし、意外や意外、カラスではなかったのだ。カラスより悪質な悪戯を仕掛ける悪魔、燈火ヘスティア炎香だった。あいつって羽とか生えてるんだ。


「ほとんどの神怪は羽生えてるぞ、羽生市で生やしてもらっているよ。」

 なかなかここまで要らない嘘もないだろう。

「…よいしょ。これ、薮坂くんのでしょ。」

 落とさなくて良かった、と一言。

 無傷だった。…助かった。


「おーす。久しぶり、炎香ちゃん。」

「おひさです、茉釣っち。でもいいんすか、私がここにいて。」

「いいんだよ。ちょうど神那もいないし、少し話も聞きたいしね。」

「お菓子でも食べるか?」

「いただきます!」


 腹が減っては戦ができぬと言わんばかりにせんべいやら和菓子に手を出す。

 こいつ、外国出身のはずなのにチョコレートとかキャラメルとか食わねえな。

「甘ったるいのは苦手で。」

 …あんこも十分甘ったるいと思うぞ?


「さあ、腹ごしらえもしたところだし、本題に入ろうか。」

「では、私から。」

 元気よく手を上げ、少しうつむいて、手を膝に戻した。

「これは、ここに来る前のお話です。」



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