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神怪だって、人間です!!  作者: サツマイモ
学問に可能な限りの愛をこめて
105/140

すずかぜクラス 勉学の1月

…はぁ、寒い。


どうも、田制敬亜です。


模試が終わり、最近は本当にやることがない。正月という古い文化は最近は滅多に日の目を見ることは無いし。無事に振られた僕に、楽しいこと、楽しみなことは特になかった。


「はあ、トイレ行くか」

次の授業までに時間があるので、特に尿意はないが、暇つぶしに行くことにした。


「さすがっすね、いろはさん」

「そ、そんなことないですよ。赤根ちゃんだって、いい成績だったじゃない」

凍てつくような廊下を、風邪をひかぬようお手洗いにスタスタ歩いていると、神々の会話が聞こえてきたので、自然とその足が止まってしまった。


僕が御手洗に向かうためには、同じ階の最も東にあるG-1クラスを通る。いつも、トイレに行くたびにこのクラスの前を通っているため、その都度会話が聞こえてくるのだが、今回に限っては、立ち止まらずにはいられなかった。

なぜなら、その会話は、ついこの前行われた模試についての会話だったからだ。


「でも、満点なんて。久しぶりとか言っていましたよ?」

「え、そうなんですか?」

「うん」

「それは、嬉しいですね」


模試は、全部で5教科だった。少なくとも、平均点は半分くらいのはずなのだ。満点が取れるとか、それこそ怪物の類である。


「ちなみに、いろはさんの前は神らしいっすよ」

「さすが、神ですね」


神とは、誰なのか。寡聞にして知らないのだが、満点を取るくらいの猛者、というか化け物は神と呼ばれてもおかしくないだろう。つまりは、神怪となっていると思う。

神怪という存在を信じている身としては、少し会ってみたい。人間を超えた存在というのを、一度でもいいから見てみたいというのは、少年心を失わぬ僕の夢だったりもする。


「何盗み聞きしてんの?」

後ろからの突然の声に、ドキッとした。


「ぎゃあ⁈ああ、涼風先生」

「そんなに、うちのクラスの子らが好きなのか?」

からかうようにして笑うのは、このクラスの担任の涼風先生だった。


「いえ、別にそんなんじゃ」

「まあ、いいけど。あんまりじろじろ見ないであげてよ?意外とシャイだからさ」

「すみません」


「それでよし!ふふっ。ちゃんとご飯食べたのか?」

「ええ、まあ」

「腹が減っては戦はできぬ。いいね」

「…本当にすごいですよね、皆さん」

「私の教え子だからね」

「やっぱり、勉強が好きなんですかね?」

「もちろんだよ。皆は、勉強が好きで、学ぶことが好きだ。じゃなきゃ、こんな将来使えないようなことしないよ」

「先生が言っちゃうんですか、それ」

「そりゃそうだよ、使えないよ。ここでの勉強だなんて」

「そうなんですか?」


「だって、基礎中の基礎なんだよ?使えるわけないでしょ。サッカー選手だって、足技鍛えずに体幹だけ鍛えてもあんまり意味ないしね」

「…ほう」

スポーツに関する知識はあまりないが、その例えには何となくではあるが得心した。


「じゃあ、しなくてもいいんですか?」

「それで、私がイエスというとでも?これだから、一般庶民はだめなんだよ」

天才なんて、崇めて落とすんだよ。

寒いにもかかわらず、そうつぶやくと同時に窓を開けた。


「寒っ」

「我慢しなよ、男でしょ?」

「その発言、怒られますよ?」

「え、そうなの?」

「そうなんですよね…」

「まあいいや。とにかく、勉強をしないという選択ほど愚かなものはない。努力をしていないのに、努力したやつを崇めるのに、資格は必要だよ」

「死角ですね、それは」


「できなくてもいいけど、しないはだめだよ」

「そうですか…」

「君は、多分勉強を面倒だと思っているだろ?」


「…そうですね。特に、文系ですから、理系は必要なのかなぁって思ったりしてしまいます」

「そうするとね、理系が出来ない人生を送るんだよ。使えない、扱えない人生をね」

「それって、なんだか残念ですね」

「寂しいよな、そういうの」


「そうですね」

「あ、そろそろ時間だな。じゃあ、午後の授業もがんばれよ」

「はい」

先生は、そう言い残して階段を下りて行った。

「頑張んなきゃ」

自然と、そんな気分にさせられてしまった。


「もしかして、神怪っていうのはこんな感じなのかもしれないな」

人間を超えた存在というのは、意外にも人間の域を超えていない。


「先生って、やっぱりかわいいな」

自分が思っている以上に、女の子好きであることが発覚して、恥ずかしい気持ちでいっぱいになった僕を、外から吹く風は、強めにあしらった。


「どうせ、嫌われるだけなんだけどな」

神怪に会えるだけ、マシな人生だと思いたいが。


「神怪に会えるって、幸福の兆しなのかな?それとも、不幸の始まりなのかな」

分からないままに、僕はお手洗いにも行かず、教室へと戻った。


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