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第陸話 終末への饗宴

 その少し前、日本上空。

「あっちいー。一パチ五スロの確変なみにアツかったわぁ。一体なんだったのよ? さっきまでのサウナ級の蒸し暑さは」

 金髪ツインテールの美少女パイロットの姿となって実体化したベリエザスが顔をパタパタ仰ぎながら、スーパーロボット、クイーンミダラとなったワットアネントのコクピット内で質問する。

「いわゆるひとつの大気圏突入というやつです。空気との摩擦でとにかく熱くなる現象で、アニメファンの間ではもう常識なので説明は割愛しますね。リアル系ではここで敵と追撃戦をやらかすのがお約束なのですが、スーパー系ではその心配はほぼ皆無なのです」

「本当? アンタ、スーパーロボットにされた腹いせにイヤガラセしてたんじゃないでしょうね? 大体、機体が熱くなったらエアコン効かせりゃ済むんじゃない? 適当なこと言ってるようなら、と学会にタレこむからね」

「なんてことを言うんですか。そもそも大気圏突入は進入角度を一ミリでも誤れば燃え尽きてしまう危険極まりない行為なんですよ。スーパーロボットのスペックであればこそ、サウナ的温度で済んだんです。あと、と学会への密告だけはやめてください。うっかり完全な欠陥品なんて珍妙な日本語を使った日にはボコボコにされてしまいます」

 成層圏まで到達したクイーンミダラはマッハの速度で落下しながらも自由自在に姿勢制御する。

「それにしても、この青い空を自由に飛び回るのは結構気持ちがいいねえ。ワットアネント、地球をクイーンミダラで攻撃した場合、どういう戦果が予想される?」

「我々が高次元宇宙意識思念体としての能力を使えば風が吹けば桶屋が儲かる的に、ものの数秒で星ごと蒸発させられますが……少々お待ちください、出ました。およそ四百時間で地表面を灰塵にすることが可能です。文明の根絶にさらに二百時間。地球全人類がテクノロジーを集結させて抵抗を試みた場合にはさらに二百時間の誤差。ただ、国家間の軋轢があるため、そこまではかからないかと。あくまで、地球人のルールに則ったうえでの概算ですが」

「その程度しかもたないの? ぬるいわー。宣戦布告でもして人類共がお前に屈する気はないって態度に出たら、大陸のひとつでも沈めて、手のひら返して土下座したところを思いっきりあざけってやった方が面白くなくない? うん。そうしよ」

「悪趣味の極みですが、女王陛下の御心のままに。おあつらえ向きに、この直下に人類が聖地とか言って神聖視している場所が認められます。手始めにそこを襲撃しますか?」

「良さげっちゃあ良さげだけど、なんか後で色々問題になんない? ぶっ潰してから、ものすごくデリケートな問題とか発生しちゃったら、謝っても遅いんだからね」

「安心して下さい、大丈夫ですよ。スーパーカリスマ意識高い系侍女、ワットアネントさんは常に二手、三手先を考えているのです」

 ヤスオがタイヘーンの機体説明を受けていた丁度その頃、隣のアダル特区、極楽楽座の特別ステージではセクシー女優ユニット、ミルキーフェイスのステージ、午後の部が煌びやかに開催されていた。

 ステージで歌に合わせて激しいダンスで観客を魅了するミルキーフェイス。そして観客席を埋めつくす彼女たちのファン、ただのドルオタ、そして業界を愛して止まない五十年来の愛好家等々が心をひとつにして熱いエールを送る。

「誰も知らない撮影日ー、借り切った別荘ー、一泊二日の主演女優ー」

 楽曲に合わせて会場内を埋め尽くすオーディエンスが一糸乱れぬ動きで合いの手を入れる。その合いの手にステージのテンションも上がる。午後の部のステージは最高潮。会場は世界の終わりが訪れようとも、それさえ知覚できないほどの熱狂に包まれている。女王ベリエザスの乗るクイーンミダラが上空から現れたのは、まさにそんなタイミングだったのである。


挿絵(By みてみん)

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