第伍拾壱話 願わくばもう一度君に
その頃、地球上空約一万メートル付近。
「はああ、やっと落ち着いたわー。一体なんなのよ? いきなり暴れだした挙句、しまいには自爆なんかしちゃって。間違いなくこっちが勝ってたじゃないのよ」
「なに言っちゃってんです。下等生物に告られてテンパったベリエザス様が私の体で無様な醜態を公衆の面前で晒すから、私まで釣られてマインドダウンしちゃったんじゃないですか。大体なんであんな安い告白にオチるんですか。誰がどう考えてもその場しのぎの嘘じゃないですか」
「う。そりゃあね、私だってその程度は分かるわよ? でも少し冷静に考えてみて? 誰がどう考えても嘘と分かっちゃうような状況で、見え透いた告白をあえてする馬鹿、いると思う? なんか逆に、そこに真実が見え隠れしてたりしなかったりしてるとも思えなくない? ひょっとすると照れ隠しのために、わざとあんな状況を選んで、命乞いをしている体でドサクサに紛れて告ってみた、的な」
「一体どうすればそこまで都合のいい解釈ができるんですか。そもそもあの星の文明を腹いせに根絶するっていう目的はどうなったんです? もう回りくどいやり方はやめて、今すぐ星ごと破壊しますか?」
「まあお待ちなさいよ。それじゃ私の面子が丸潰れじゃないのよ。例えば、プロの格闘家が小学生に格ゲーでボコボコにされたとするわよねえ」
「まあ、さっきまでの我々の状況がそんな感じですよね」
「それでプロの格闘家がキレて、相手の小学生に片翼の天使とか後藤弐式を食らわせたとするとアンタはどう思う?」
「かなり大人気ないと思いますね。実際そんな現場を目撃したら新聞に投書さえするかもしれません」
「それなのよ。じゃあ、プロの格闘家が面子を保つには、やっぱりゲームの腕を磨いてリベンジするのが大人の対応ってモンでしょうがよ」
「小学生に勝つためにいい大人が日がな格ゲーに打ち込むのが果たして大人の対応と言えるかどうかは甚だ微妙ですが、まあ、仰りたいことはよく分かります。つまり、ベリエザス様はわざわざ巨大ロボットの操縦スキルを磨いて、あいつらにリベンジしてから地球を滅ぼすと、そう仰りたいのですね?」
「さすがはスーパーウルトラデテクティヴ侍女のワットアネントさん。呑み込みが早いじゃないのよ」
「では、デテクティヴの推理をもうひとつ。リベンジにかこつけてあの赤い機体のパイロットに一度会ってみたいとかいう下心も、ちょっとはあるんでしょ?」
「ワットアネント。ひとつ言っておくわ。私、賢い子は好きだけど、賢すぎる子は大嫌いよ。覚えておいて」
「はい。つまんないこと言ってどうもすいません」
「それじゃあ、巨大ロボのパイロットスキルを磨くために、修行といきたいとこだけど、まずは敵の戦力を知るほうが重要よね。昔の兵法家もそう言ってたし。そうと決まれば早速敵情視察よ! ワットアネント、まずはアンタを地球人の大好きな円盤型の宇宙船にするからね。むううーん」
「ちょっ、やめてください。地球に行きたきゃ転移すればいいじゃないですか。なんでわざわざ目立つような姿にするんですか。ああああ」
嫌がるワットアネントに構わずベリエザスが気合を発すると、古典的なアダムスキー型UFOの姿が無理矢理形作られた。




