第伍拾話 帰るべき場所
「いやー、参ったぜ。まさか爆風で吹き飛ばされた拍子に、動力がいきなり復活してそのまま飛行できるようになるなんて、そんな奇跡あるもんなんだな。危うく手前のハードラックとダンスっちまう一歩手前だったぜえ。俺じゃなかったら百パー死んでたな」
「荒死郎!」
ありすが、早乙女が、鬼椿とスパイマンが、歓喜の声を上げた。ハカセもまた、
「おかえり。荒死郎。生還できてなによりだ。だが、これだけは言っておくぞ。お前が命拾いしたのは、そのフレイムライダーの性能のおかげだということを忘れるな。さて、謎の敵は謎のまま謎の自爆を果たしたし、極楽楽座も当初の目論みどおり壊滅した。パイロットも全員生きている。それじゃあ最後に三機で合体して、大団円といこうか!」
「はあ? お前なに言ってんの? こっちは命からがら助かったってのに、なに今更また命を危険にさらすような真似しなくちゃなんないんだよ」
「分かっとらんな。我々はXの指示を無視して出撃したんだぞ。それでなんの実績も挙げられず、敵がよく分かんないけど自爆しましたでは話になるまい。幸い爆発の中心部はまだ煙に包まれてるし、ここで三機が合体しておけば、上層部にいい感じの報告書を上げることができる。なんなら前後の映像を編集したり加工したりして、タイヘーンスリーが敵を撃破したっぽい印象を与えることもできるかもしれん」
「おい、仮にも国家の支援を受けてる組織がそんな捏造してもいいのかよ」
「滅多なことを言うな! あくまでデータの提示の工夫であって、ハカセが最も忌み嫌う捏造や印象操作といった、低劣極まりない行為と一緒にするなあ! これは純然たる演出の範囲内であって、決してよこしまな意図を含む改ざんなどではない! 作り手に罪などない。全責任は受け取る側にあるのだ。あとはこれにお前達全員が口裏を合わせてくれれば、完全犯罪として成立するんだ!」
「もう犯罪って言っちゃったよー。やっぱりろくでもないことやってるって自覚あるんじゃん。罪の意識がない分、タチ悪いわー」
「まあまあ、荒死郎。ここは大人しくハカセの言うことを聞いておこうよ。ご機嫌をとっとけば後で焼肉おごってくれるから」
ありすに宥められてヤスオも考え直す。
「確かに、ここでへそでも曲げられて、クーポンの約束を反古にされたら目も当てられねえな。くそっ。癪だが、オッサンの頼みを今回だけは聞いてやるよ」
「よーし、それじゃあいくよー。ゴー! トライアングル合体」
「しかし三角形のフォーメーションでもないのにトライアングルはいかにも馬鹿っぽいな。いっそのこと、ジェットストリームドッキングと改名しよう」
ハカセがそんなことをブツクサ言っている間に、三機は合体フォーメーションに入り、無事、合体を果たし、巨大ロボの威容を現した。
「すうゥぱあー、タぁいへえぇぇーんッ、スっりィィーいい!」
合体した巨大ロボ、スーパータイヘーンスリーはポーズを決め、内臓スピーカーから名乗り声を発した。だがその声は明らかに事前に録音されていたであろう、ハカセの、ちょっと裏返った声だった。




