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第肆拾玖話 やっと届いた声

 クイーンミダラが起した爆発は収束したものの、爆煙はいまだ地表を覆っていた。ドーム型の巨大な爆煙が地上に停滞し、周囲の空気を巻き込んでいる。中心付近には時折、稲光のようなものも見えた。ありすの二号機、早乙女の三号機はいち早く脱出に成功したものの、ヤスオの一号機は爆煙の中心部にいるはずだった。二人はただ茫然と、渦巻く煙を眺めるしかなかった。ありすはコクピット内で泣き崩れた。

「ううっ。ひどいよ、荒死郎。ボクを守るために、勝手に一人で逝っちゃうなんて。ボク、荒死郎のこと、一生忘れないからね。ところでハカセ、牛男爵での祝勝会は予定通りやるんだよね?」

 早乙女もまた、悲しみに暮れていた。

「さよなら、荒死郎君。僕の大胸筋君も、君の死を悼んでいるよ。ダカラアレホド触ラセテアゲルッテ言ッタノニ。タブン死ヌトキ死ヌホド後悔シテルヨ」

 鬼椿も悲しみを隠さない。

「ごめんでー、ごうじろう。ごんながんだんにぐだばるんだっだら、もっだいぶらずにいっばづぐらいやらぜであげればよがっだー」

 スパイマンも哀悼のメッセージを入れた。

「荒死郎。君はその命と引き換えに世界を守ったんだ。君の死は無駄にはしない。これからの世界は僕たち、次世代のニューヒーローズが守るから、安心してよね」

 ハカセもまたヤスオの死を惜しんだ。

「さらばだ。破天荒死郎。思えば、嫌がるお前を無理矢理パイロットにしなければ、こんなことにはならなかっただろう。そうであるなら、このハカセにも責任の一端は米粒くらいはあるのかもしれん。だが、ハカセは決して謝ったりしないぞ。なぜなら、この勝利は人類にとっては大きなものだったが、お前の死は取るに足らない、ちっぽけなものだからだ。うむ、決まった。この名言は子々孫々まで伝えられることだろう」

「荒死郎ー!」

「荒死郎くーん!」

「ごうじろーう!」

 ありすが、早乙女が、鬼椿がヤスオの偽名を叫んだ。破天荒死郎が偽名という事実はもうどうでもよくなっていた。だが、彼らの通信機に、小さな反応があった。

「ザザッ……お前ら……ザザザッ……俺が死んだと思って……好き放題……言いやがって……ザッ」

「まさか、荒死郎か? やはり生きていたんだな? ハカセは信じていたぞ。フレイムライダーの耐久力なら当然だ!」

「でもさっきからザザザとか、ずいぶん鼻をすすってるねえ。風邪ひくのは筋肉が足りてないからだよ。その証拠に僕は生まれてこのかた、風邪なんかひいたこともないよ。ソーッ、マッスゥー!」

「いや、違うんだよ。あれは普通に喋って生還したらありがたみに欠けるから、ボイパでノイズを演出してるんだよ、きっと。だからそこは触れないであげておこうよ」

 早乙女とありすがそんなことを言い合っていると、煙を裂いて、フレイムライダーが飛び出した。


挿絵(By みてみん)

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