第肆拾捌話 偽りの報いは光と共に
ワットアネントが錯乱する一方、ヤスオの暴挙にハカセとありすも激しく混乱していた。
「やだやだー。ボクをさんざん弄んでおいて、そんなビッチに告白なんかしないで! いくら助かりたいからって、嘘の告白で見逃してもらえりゃ儲けもんって魂胆でも、そんなんで命拾いした荒死郎なんて、ボクは見たくなんかないんだからね!」
「そのとおりだ! ハカセだって許さんぞ! いくら結婚詐欺師ばりの白々しい告白でも、ずっとお前を信じて待ち続けたヤツコさんの気持ちを考えろ! そんな三文芝居を見せられて、気分がいいわけあるまい!」
「ちょっとアナタたち、俺いま一世一代の大博打やってんだからさ、少し静かにしてくれません? 相変わらず、かなり分の悪い賭けなんだけどさ、いま奇跡的にどうにか対岸が見えてんだわ。クレームなら生き延びたときにいくらでも受け付けますから。だから今だけは黙ってて。頼むから!」
ヤスオが懇願している間、ベリエザスはますます動揺する。
「や、やめてよ! 大勢見てる前で、恥ずかしいわね! 大体、私とアンタは敵同士なんだからね! いくら当人同士がよくっても、周囲が絶対認めないじゃないのよ! い、いえ! 私は別にOKとか言ってるんじゃなくて、あくまでも一般論として、現実的じゃないというか、まずはお友達から始めるべきなんじゃないかというか……」
ベリエザスが意味不明な言い訳を始めると、搭乗するクイーンミダラもぎこちない動きで大暴れを始めた。
「ひいいっ! やめてくださあい! 私の体を使って妙な動きをしないでください。まるで私が告られて醜態晒してるみたいじゃないですか」
ワットアネントも思考が混乱し始めた。ヤスオたちはなにが起こったのか理解ができない。高次元意識思念体は万能であるがゆえに、わずかでも処理ができない事態に直面すると、小さな疑問が玉突き式に増殖し、たちまち思考が渋滞を起し、情報処理が停滞し、下等生物並みの思考力にまでレベルダウンしてしまうのである。高度な意識の思念体とは、そういうものなのである!
クイーンミダラは狂犬のように暴れ、周囲の建物を破壊しまくり、やがて機体が赤く発光し始め、各関節部から大量の蒸気を噴出した。鬼椿が水割りを飲みながら三人に呼びかける.。
「みんなー、ぎをづげでー。でぎろぼっどのないぶおんどやじゅうへんのあづりょぐがぎげんなずうぢをだだぎだしでるわー。いまのうぢににげどいだほうがぶなんっぼいわよー」
「なに言ってんのか、さっぱり分かんねえよ! ものすごくヤバげな雰囲気はビシバシ伝わってくるけどよ! ありす! 通訳頼む!」
「詳しい訳は省くけど、とにかく危険だからみんな逃げてー!」
「了解! マッスルエスケープ!」
ありすと早乙女が一目散にその場を離脱。
「いや、逃げてと言われましても、俺、瓦礫に埋まってて身動きすら取れないんですけど」
ヤスオが言い終わると同時にクイーンミダラが光を放ち、巨大な爆発音と共に爆散。
周囲に激しい爆風が吹き荒れ、光と化したクイーンミダラは姿を消した。




