第肆拾伍話 踊れ、哀しみの輪舞を
「見つけたわよう! くらえ。今夜は友達の家にお泊りするって言ったからキーック!」
ベリエザスの絶叫と共に繰り出されたボレーシュート気味の蹴りが合体寸前のフレイムライダーをジャストミート。雷鳴のような金属音を立てて一号機は吹っ飛ばされ、ヤスオは乾燥機に放り込まれた洗濯物のようにコクピット内をのたうち回る。
一号機はキリモミ回転しながら地面に激突。二号機と三号機は合体モードを解除しその場を離脱。ハカセとありすが悲鳴交じりにヤスオに声をかけたが応答がない。その一方でベリエザスは勝利の雄叫びを上げた。
「っしゃオラーッ! どんなもんじゃーい! すべて狙いどおりだわ。見た、見た? あの素晴らしく華麗な一撃!」
「はいはい。存在すら忘れらてしまうほど気配を断ってからの容赦ない不意打ち。見事と言うほかありません。パチパチパチ」
「べつに拍手の描写はいらないわよ。我ながら会心の当たりだったけどね。こう、左足にタメを作って、腰を入れながら上半身で反動を付けつつ、インパクトの瞬間、右足をえぐり込むように打ち抜き……ああ、もう、ひと言じゃ説明できない。決勝弾放ったスラッガーみたく記者会見でも開きたい気分だわよ。運命が俺をあの瞬間に導いた、みたいなコメント、今の私なら説得力あると思わない?」
「なんかもう、そこまで満足していただけると私としても本望ですよ。三機あるうちの一機を仕留めただけなんですけどねえ。ぶっちゃけ、もう充分堪能したんじゃありません?」
「なに言ってんの。この調子で残りの二機も沈めるわよ。でもその前に、赤いやつのとどめをきっちり刺しておかないとね。そのあたりは用心深いのよね。私」
クイーンミダラがゆっくりと瓦礫に埋もれた一号機に歩み寄る。一号機のコクピット内にはハカセとありすの絶叫が響いていた。




