第肆拾参話 断ち切られゆく希望
「荒死郎! 気をつけて。なんかあのロボット、損傷したところが光ってるよ」
「今更なにをしようがもう遅え! とどめだ!」
フレイムライダーが強烈な光を放ち、一条の光線がクイーンミダラを直撃。だが同時にバリアが展開。命中したと思われた光線は霧散。唖然とする荒死郎たちをよそにクイーンミダラが起き上がる。さっきまで荒死郎が与えたダメージが修復されつつあった。
「あーっ! 自己修復なんて、手垢の付いた機能でダメージ回復してるう! ずっこい、ずっこい!」
ありすが上空を旋回しながら悔しさを滲ませる。一方ハカセは攻撃を防いだバリアに戦慄した。
「馬鹿な。最強装備のセンスプ砲を弾き返すとは。あれはただの防御層ではない。時間か空間を遮断し、物理法則を捻じ曲げたんだ。うむ、これを次元断層と命名しよう。早速ネイチャー誌に投稿する論文の作成に取り掛からねば。よそに先を越されないうちにな」
「いや、次元断層はいいんだけどよ、さすがにセンスプ砲はまずくないか? 面倒でもほかの名前にしようぜ。悪いことは言わないから」
一方、クイーンミダラのコクピット内ではベリエザスが喚きながらハッチを叩いていた。
「きゃー! いやー! こんな鉄の棺桶で死ぬのはいやー! 出してー。私をここから出してー」
「なにやってんですかさっきから。いやまあ、誰が見てもクサい芝居なんですけどね」
「え? そ、そう? いや、やっぱりピンチに陥ってパニくるヒロインの素材もあった方がいいかなって」
「なんですか素材って。誰が使うんです。それよりこっちはもう反撃モードに入ってるんですよ。なんならベリエザス様はコーヒーでも飲んでくつろいでてもらって結構ですよ。その方がこちらとしても助かりますし」
「そういうわけにはいかないわ。侍女一人を戦わせて自分は安全な場所にいるなんて耐えられない。私も共に戦います。女王としてあるまじき軽率と咎められようとも。そういうわけだから、こっから操縦は私に任せてね。奴らを華麗に蹴散らしてご覧に入れるわ」
「ただの見せ場泥棒じゃないですか。まあ、ほぼほぼ想定内ですけどね。じゃあお願いします。あの赤い機体の方も弾切れのようですし、安心して一方的にボコれますからね」
「なんか棘のある言い方だわね」
ダメージから完全回復したクイーンミダラがフレイムライダーに狙いを定める。
「墜ちろ! お持ち帰りオッケーパーンチ!」
クイーンミダラがジャンプからのハンマーパンチを繰り出すもヤスオがひらりと躱し体育館を誤爆。ベリエザスは着地と同時に第二撃に繋ぐ。
「小癪な! 足を挫いたふりでお姫様抱っこキーック!」
が、この後ろ回し蹴りも空を切り、高層タワーを真っ二つにした。
「ベリエザス様、無礼を承知で申し上げますが、さっきからのそのクソしょうもないネーミング、どうにかなんないんですか?」
「なに言ってんの。必殺技は名前を絶叫しながらの発動が定石でしょうが。欲を言えばコクピット内でポーズも決めたいとこだけど、さすがにそれは無理っぽいから我慢するわ」
「いや、私が言うのはもう少しベーシックな部分なんですけど。いえ、やっぱりもういいです。つまんないこと言ってすいません」




