第肆拾話 届かぬ想い
「荒死郎! ボクを助けに来てくれたんだね。ずっと信じて待ってたよ」
到着した一号機にありすが通信を入れる。
「いや別にありす助けに来たわけじゃねえし。てゆうか三機揃わなきゃ合体できねんだから仕方ないというか。とにかく、早乙女が来るまで時間を稼ぐ。ありすは武器がもう尽きてんだろ。俺が奴を牽制するから、お前は適当にその辺飛んどけ」
「うん。でも、無茶はしないでね。この戦いがすんだら海の見えるチャペルで結婚式を挙げようね。約束だよ」
「そういう無駄な死亡フラグ立てないでくれる? 男の娘にそんなフラグ立てられて死んだら馬鹿だろ! モノホンの美少女ならまだ諦めつくけど」
「この私を差し置いて、なに二人でイチャついてんのよ! トサカくるわね!」
一号機と二号機の間を裂くようにクイーンミダラが跳躍してチョップを放つ。辛うじて二機はVの字を描くようにその場を離脱。
「くっそう。別にイチャついてたわけじゃねえのに不意打ち仕掛けやがって。あの宇宙の女王様、思い込みがハンパねえな」
悪態をつくヤスオの元にハカセから通信が入る。
「荒死郎! 理由は分からんが敵は戦法を変えてきたぞ! 今まで攻守一体だったが、なぜかバリアを解除して接近戦にシフトした。なにがあったか知らないが、こいつはチャンスだ。一気呵成に攻めるんだ!」
「なんでそう楽観的な考えができるんだ。逆に不気味だとか思わねえのかよ」
「早乙女君が到着すれば合体して互角に戦える。それまでにありったけの火力を叩き込んで、少しでも有利な状況を作るんだ」
「お前、自分に都合の悪いことは信じないタイプだろ。でもまあ、攻撃しない限り埒が開かねえな」
ヤスオは一旦距離をとり、クイーンミダラを背後からロックオン。
「くらえ! ヤスオファンタスティックミサイル!」
叫びながらヤスオが右上の丸ボタンを連打。
「イテーヨ、イテーヨ、イテーヨ」
謎の機械音声が一号機から流れた。ヤスオは怒りを押さえつつハカセへの回線を開く。
「おいテメー。いまの声はなんの冗談のつもりだ。ボタン押したら普通はミサイル発射だろうが」
「ああ、言い忘れてたが、武装関係は全部コマンド入力なんだ。ボタンを間違って押して基地内で発射されたら大変だろ。今のは敵に攻撃が当たったと思わせる偽装被弾音声システムだ」
「無駄な機能ばっかり付けてんじゃねえ! その武装関係のコマンドってのを今すぐ教えろ。手前のケツの穴に発射したいとこだが、それは我慢しといてやる。まだ敵をロックオンしている今のうちにだ!」
「なにをそんなに興奮してるのか知らんが、よく聞けよ。ミサイル発射は方向キー下、右下、右と同時にAボタンだ。カッコ右向き時な」
「そのカッコ右向き時ってのは一体なんなんだ。いやまあ、出典は大体分かるんだが。戦闘機に乗ってて右向き時とかありえねえし」
文句を言いながらもヤスオがコマンド入力。同時にフレイムライダーの胴体から数発のミサイル発射。板野サーカスばりの動きでクイーンミダラの背中に命中。派手な爆発が起き、クイーンミダラが膝を折った。




