第参拾捌話 邂逅。早乙女と荒死郎
その頃、ロボキッズ王国の地下カタパルトから発進したヤスオ操るフレイムライダーが三号機と合流を果たしていた。道に迷った挙句、避難する一般車両の渋滞に捕まり身動きがとれなくなっていた。
「おい早乙女! こんなところでなにやってやがる。サボってんのか。まさかお前、逃げ出すつもりじゃないだろうな?」
「そんなわけないでしょー。 このあたりの交差点がゴチャゴチャしてて、どこに行けばいいのか見当もつかないうちにこの渋滞だよ。にっちもさっちもいかなくなったんだよ」
「どう考えてもお前の進行方向は真逆だろうが! どんだけ方向音痴なんだ。敵スーパーロボットは後ろだ。いますぐUターンしろ」
「無茶言わないでよ。前も後ろも車両で塞がってて方向転換なんかできないよ」
見ればひと際大きく視界を遮る三号機、グランドカイザーは避難する一般人のストレスの格好のはけ口となっていた。クラクションが鳴りまくり、野次や怒号も飛んでいる。
「くそっ。世界を守るスーパーヒーローの気も知らず、一般ピーポーはいつも好き放題言いやがる。よし、俺に任せろ。早乙女、対ショック姿勢」
そのままヤスオは垂直上昇。大渋滞の国道から距離をとる。すると突然ハカセからの通信。
「おい待て荒死郎! お前、一体なにをする気だ」
「大体想像つくだろ。ミサイルで車両を掃討して道を空ける。渋滞に捕まった奴なら一度はやってみたいことだろ」
「それは駄目だ! 道路の修繕に一体いくらかかると思う! 公共施設は高くつくんだ。お前の気持ちはすごくよく分かるが、ここはひとつ穏便に頼む」
「じゃあどうすんだよ。渋滞の解消待ってたら日が暮れちまうぞ」
「うーん。三号機の性能ならば、一般車両くらい蹴散らして走れるはずだ。これが最も安全確実だな」
「それじゃ車を何台も潰しちまうぞ。とんでもない賠償請求がくるんじゃないのか」
「正義のためなら多少の犠牲は止むを得ん。あの無敵超人だって最後まで理解されなかったんだ。正義の味方は孤高なものなのだ」
「聞いたか? 早乙女。そういうわけだからお前は周りの車をどけて現場に向かえ。俺はひと足先にありすの援護に向かう」
「うむ。一般車両への被害は極力抑え、なるべく急いでゆっくりな。早乙女君のナビはこっちに任せろ。ヤツコさんに指示を出してもらう。」
「了解。とにかく、周りの車を押しのければいいんだね」
「いや、それよりあのおばさんのナビで大丈夫なのか? ますます道に迷うような気がするんだが」
一抹の不安を覚えつつヤスオはその場を後にする。早乙女の三号機は周囲の車を押しのけ、時に踏み潰して強引にUターン。ますますクラクションが鳴り響き、その場は軽い恐慌状態に陥った。




