第参拾陸話 超時空の艦隊
「命中! 目標、完全に沈黙したと思われます」
ミサイルを放った艦隊旗艦のブリッジは創設以来の大手柄に沸きに沸いた。ある者は口笛を吹き、またある者はガッツポーズをとり、肩を組み記念撮影する隊員もいる。その中にあって、艦長は努めて冷静を装う。
「浮かれるんじゃない! 勝って兜の緒を締めよ! まずはまだ上空にいる、ロボキッズ王国から出てきたあの所属不明のヘリの馬鹿パイロットに武装解除の警告を出せ。指示に従わないようなら撃墜も辞さんとな」
などと言いながらも、今夜の記者会見にはどんなリップサービスを用意しようかな、などと鼻の下を伸ばす艦長であった。が、そんな艦長の上機嫌に水を差す報告があがった。
「当該のヘリに警告を出したところ、地球防衛機構、エデンの所属であると返信がありました。また、パイロットを名乗る者から通信も入っています。めんどくさいのでそのまま読み上げます。あんな程度のちゃっちいミサイルでスーパーロボットが倒せるわけないじゃん! バッカじゃないの? 早くそこから逃げて! すぐに反撃がくるんだからね! 以上」
むさくるしい隊員の女の子口調に艦長が思わず顔をしかめる。
「エデンだと? あの政府肝いりのローカル自警団か。自分で仕留められなかったもんだから負け惜しみか。もしかすると手柄を横取りする腹かもしれんぞ。そうはいくか! あの正体不明のロボットを仕留めたのは我々、海上防衛隊だ!」
ひとり激昂する艦長に、続けて報告が入る。
「再び入電。読み上げます。やっぱりダメージなんか食らってないじゃん! もう起き上がろうとしてるよー。早くそこから逃げてー! 早く早くうー。だ、そうであります。いかが致しますか」
またも隊員の低い声での女の子口調に閉口した艦長が帽子のつばを下ろす。
「アホめ。と、言ってやれ」
「はあ?」
想定外の艦長の返答に思わず隊員が聞きなおす。
「聞こえなかったのか! アホめ! と、言ってやれ!」
言いながらあまりにも高揚した艦長の表情に隊員は困惑する。
「いや、その。アホめは聞こえてるんですけど、それって昔のアニメかなんかのパク……」
「口答えするなあ! 男たる者、艦長に登りつめたならば、このセリフは一度は言ってみたいと誰もが思うもんだろ! お前だって艦長になれば分かる! 男には万難に際して言わねばならぬセリフがあると! 今がそのときなのである!」
艦長のわけの分からない理屈と迫力に気圧された隊員が仕方なく通信員の元へ向かう。と、上空から空気を裂くような奇妙な音が聞こえた。その異変にブリッジの隊員全員が思わず顔を上げる。同時に爆発。金属がきしむ音を立てながら旗艦ゆるやかは轟沈。海上防衛隊虎の子の関東方面艦隊は壊滅状態となった。




