第参拾肆話 荒死郎飛翔の時
「おい、待て。座ったはいいが、このコクピット、テレビのモニターみたいなモンがあるきりで、操縦桿らしき物がねえぞ。もしかして音声とかで操縦するシステム?」
「そのモニターの下に引き出しがあるだろ。そこに操作系統を集約した第三世代型リニアアクティブコントローラーが内蔵されている」
言われるままに引き出しを開けると、コード一本で繋がった手帳サイズのコントローラーが出てきた。左に十字キー、右に丸ボタンが四個付いている、分かりやすく言えばひと昔前の家庭用ゲーム機のコントローラーそのままである。そのシンプルすぎる操作システムにヤスオは不安を抱かずにはいられない。
「これ、一応戦闘機でありつつ、巨大ロボにもなるんだよな? 本当にこんなコントローラーひとつで操作できるのか?」
「心配無用だ。これはお年寄りから子供まで戦場に駆り出すことを可能にした、誰でも手軽に操縦可能な親切設計の超簡単次世代型インターフェース。ちょっとしたゲームの経験があれば誰でも巨大ロボットを動かせる夢のシステムなのだ。複雑な動作はすべてコマンド入力で一元管理され、基本動作は直感的な操作が可能。死んで覚える作業を繰り返すうちに上達が実感できる小憎らしいギミック。やりこみ要素の高い高難度のコマンドも多数用意されており、プレイヤーを飽きさせない」
「ゲームのレビューかよ! しかもこのコントローラー、グリップも付いてねえ、かなりレトロなデザインで持ちにくいんですけど。それと、こんな狭い密室で画面見ながらこんなコントローラー握ってる姿はかなり痛い絵になるが、ホントに大丈夫なんだろうな?」
「ぶっつけ本番で不安なのは分かる。だが安心しろ。お前達の戦いはハカセとヤツコさんがしっかりサポートする。操作系統で不明な部分も逐一アドバイスを送る。お前は決して一人で戦うわけではない」
「いや、俺が心配してんのはもう少しデリケートな部分なんだけど。まあどうせお前は分かっててスルーするんだから言っても無駄なのは分かっちゃいるけどよ」
「とりあえずカタパルトまではオートで動く。起動は真ん中にある二つの小さなボタンの右側、スタートと書かれているボタンを押せば起動だ」
「まんまゲームのスタート画面なのな。ここで間違えたふりして隣のセレクトってボタンを押したらどうなるんだ?」
「特に何もない。間違った操作をすると自爆するとか、鬼仕様ではないから。多分恐らく。いいから、とにかく好きなように動かしてみろ。習うより馴れろ。考えるな、感じろ。踏み出した一歩が道となる。待てば海路の日和ありだ」
「これからスーパーな兵器に乗り込もうとする若造にそんな煽るようなこと言っていいのかよ。トミノさんが怒るぞ」
なおも苦言を呈するヤスオをハカセは無理矢理コクピットに押し込み、ハッチを閉じた。コクピット内は暗転したが、すぐにモニターが点灯し、格納庫内の映像が映し出され、静かに移動を始めた。




