第弐拾肆話 闇に染まれ、正義の名の下に
「おい、ここはひとつ利害の調整といこうや。敵スーパーロボットはいまどこにいるかは知ってるよな? 隣の極楽楽座だ」
「今更それがどうしたっていうんだ。もちろん知っているとも。」
「なら話は早い。いいか、俺たちが今からスーパーロボットで出撃する。そんでもって敵も反撃してくるだろ。まあ当然だわな。だが俺はなるべくその場に留まりつつ、敵とくんずほぐれつのガチンコ勝負を挑む。するとその周辺はどうなる」
「まあ、めちゃくちゃになるだろうな」
「さて、ここで問題です。オッサンの収入源でもあるロボキッズ王国の商売敵である極楽楽座を合法的に潰し、ついでに人類の敵も撃退して、世間のヒーローにもなれて、あわよくばその功績が認められてなにかの間違いで博士号を取得できるかもしれない、そんなポジションに今いる、世界で一番のチャンスが目の前にぶら下がってるラッキーな人物は一体誰でしょう? もしかするとテレビのコメンテータとして呼ばれちゃったり、国会議員や県知事にでも推す団体が現れるかもしれませんねえ」
「よ、よせよ。ハカセは世事に疎いんだ。政治家なんて柄じゃない。でもまあ、どうしても、と言われれば、ちょっとは考えなくもないかな」
「別になれとは言ってませんよ。やるもやらないも、すべてはアナタ次第。なんなら俺が意図的に極楽楽座に集中砲火を浴びせてやってもいい。なに、心配は要りません。戦闘中の事故と言っとけば、大概は大目に見てくれるんです。みんなやってることなのです」
「し、しかし。そんな悪どい手段で商売敵を潰して、果たしてそれでいいのだろうか」
「まだお分かりになられてないようですねえ。これは双方に旨味のある、ウィンウィンの策なのですよ? 考えてごらんなさい。極楽楽座が更地になって、その土地はゆくゆくどうなるんでしょうねえ。ま、私は人類の敵を撃退して予算倍増したエデンが接収するものと睨んでますが。それはいいとして、その場合アダル特区はどうなるのでしょうね。経済特区ともなればおいそれとなくすわけにもいかないでしょう。現実的には元あった場所に表向きは極楽楽座を再建する。だが、その復興事業と経営権は事実上地下のエデンが握る。そうすることにより、エデンの設備拡張を進めつつ、地上では更なる利権が発生する。私はこれを破天荒システムと命名しました」
「こ、荒死郎! 貴様、悪魔に魂を売ったか!」
「なんとでも。しかしこれが最善であることは疑いようもありません。ならば、その甘い果実を手を伸ばせば届く位置にある者が掴みとる。なんの不都合もありません。その暁には経営者の権力を行使して、ミルキーフェイスのメンバーとステディな関係を築くのも一興でしょう。さしあたりAWA☆美あたりと旅行にでも行きますか? 一人では怪しまれますね。ついでに結城川や甲森も誘いましょうか。あ、その時は私もお呼ばれしたいな。今からファンが夜毎枕を涙で濡らす光景が目に浮かびますよ」
ハカセが突然両手でヤスオの手を握り締めた。
「もういい。やめてくれ、荒死郎。お前が悪魔に魂を売るというなら、ハカセも共に地獄に墜ちよう。それが心の兄弟、魂の兄の務めというもの。ならば共に行こうではないか。人の道を外れ、地獄の業火に焼かれようとも」
するとまたも大きな揺れが起こり、天井から砂も落ちてきた。ありすと鬼椿が悲鳴をあげつつしゃがみこむ。再び通信が入った。
「もしもしみんないる? こっちはもう限界だ。機動隊の突入を皮切りにクイーンミダラが攻撃を開始した。破壊力バツグンの光線をぶっ放してあちこち吹き飛ばしてる。幸い周辺は避難が完了してるから建物への被害だけで済んでるけど、防衛隊は陸、海、空に出動命令が出た。こうなるともうここら一帯はカーニバルだ。早くタイヘーンを出撃させてよ! 最悪、駆けつけ警護の名目で防衛隊を攻撃してもいいから。みんなの極楽楽座を潰すわけにはいかない。早くしてよね」




