第弐拾参話 地の底の巨人よ、目覚めよ
「おいオッサン。よく考えろよ。いま、この地球に高次元なんたらの女王がスーパーロボットで侵攻してきた。目的はデストロイオールヒューマンズ。そいつに対して地球の軍事力じゃ太刀打ちできねえ。それなのに公安は警官隊やSATを投入してくる、ドンキホーテばりの空気の読めなさっぷり。だが、ここには奴に対抗できそうなスーパーロボットがある。都合よく今日、パイロットもとりあえず揃ってる。ついでになに言ってんのか分かんねえオペレーターもだ。そしてこのスーパーロボットは偶然たまたまつい最近ロールアウトして、これからさあテストしましょうてなとこまでこぎつけてる。これはもうなにか見えない力が俺たちに出撃しろと言ってるとでも考えないと説明つかねえ。それなのにオッサンは国会議員のおじさんは正義の味方よよい人よ、てな理屈で出撃しないと言っている。そういう理解でいいんですね?」
「そういう理解でいいんです。ここでなにもしなければ今年中の博士号取得は絶望的だけど、なにかやらかしたら一生ただの人になってしまいます。それだけは避けたい事態なのです」
「畜生。さっき助の字がちょっといいこと言ってたっぽいのに、全然心に届いてねえじゃねえかよ。やっぱコネ採用は駄目だな。おい。ありす、おばさん。俺なんかよりお前らの方がこのオッサンと付き合い長いだろうがよ。なんか俺とオッサンが十年来のコンビっぽくなってきてるけど、今日が初対面だからな。あんたらの方がオッサンの説得には適任だろうがよ。なんとかこのオッサンの人生、棒に振らせてやってくれ」
ヤスオに説得を託された二人が不承不承従う。
「うーんと、まえから言ってるじゃない。ハカセも一度でいいから女装してみなよ。思い切って一線を越えちゃったら、今まで知らなかった自分に会えるよ」
「なんがおぢごんでるはがぜもいいよでー。おどごのあいじゅうがぜなががらただよっでるっでがんじー。いばのはがぜだっだらわだじだがれでもいいわー」
「ちょっとアナタたち、少し黙っててくださらない? 俺がいま説得してるんだからさ、余計な口を挟まないでほしいんですけれども」
ヤスオの言い草に頬を膨らませる二人に構わず説得を続ける。




