表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/57

第玖話 妖精が舞う滅亡への序曲

ベリエザスとワットアネントが地球人の反応に当惑している間、観客が肉の壁となり、奇跡的に無傷で済んだミルキーフェイスのメンバーが突如出現したクイーンミダラに敵愾心を燃やす。

「くっそう。なんなのよ、アイツ。いきなり乱入して、ウチらのステージめちゃくちゃにしやがって。アンタたち、怪我はない?」

 リーダーの結城川クミコがメンバーの安否を確認する。

「はいいー。と、とりあえずみんな、怪我とかはないっぽいですうー。ファンのみんなが身を挺して守ってくれましたからー」

 ナンバーツーのマグロ系女優、甲森ひとみが報告を上げる。

「リーダー、ありゃあ多分、隣のロボキッズ王国のイヤガラセやで。連中、ワイらに集客で勝てへんもんやさかい、いよいよ尻に火ぃついて、カチ込みかけてきよったんや」

 方言で人気を博すマウンティング系女優、宇間のり子が生来の負けん気でメンバーを励ますが、ほとんどのメンバーがパニックを起していた。

「ひどい! 信じらんない! 私達がなにしたっていうの? ファンの人たちとの交流を、どうして邪魔するようなことができるの!」

 メンバーで最も人気の高い癒し系女優、AWA☆美は頭を抱えてしゃがみこみ、ショックで泣き喚いている。その他のメンバーも概ね同じような状態だった。

「アンタたち、まだ動けるね? 声も出るね? じゃあ、やることはひとつだよ」

「はわわー。どうするんですかあ。今すぐ逃げるんですかあ。ファンの皆さんを置いて逃げれませえん」

「馬鹿! 逃げるわけないだろ! 機材は駄目になっちゃったけど、力の限り歌うんだよ!」

「いや、リーダー。歌う、かて、ワイら口パクユニットやで。それにこんな状態で歌うて、どないなるっちゅうねん」

「ウチらにできることは撮影と歌うことだけだろ。歌ってみんなに元気を与えて、ステージを最後までやりきるのがウチらの仕事だよ。あそこに浮かんでるロボキッズ王国のクソ野郎どもに、こんな陰険な妨害には屈しないってとこ、見せてやるんだ」

「私も、クミコさんの言うとおりだと思います。私達は歌って踊って業界に愛と平和と夢を届けるセクシーユニット、ミルキーフェイスじゃないですか。その私達がこの程度で挫けてちゃ駄目です。みんな、怖いのも逃げ出したいのも分かるけど、ここは勇気を出して、歌を歌ってあのロボットさんに幸せを届けましょう!」

 いつも控えめな甲森ひとみの発破に、さっきまで怯えていたメンバーが次々と立ち上がり、リーダー、結城川クミコの元に集まる。

「私達、やります。撮影現場ではもっと辛い目にも遭ってきたんですもの。この程度、どうってことありません!」

 AWA☆美が皆を代表して決意表明すると、結城川も拳を突き出し、それに応える。

「ありがとう。みんなの気持ち、確かに受け取った。勇気が湧く、結城川クミコ。みんなの命を預かったからには、力の限り歌うからね。さあ、あそこに浮かんでるロボキッズ王国の童貞野郎に、愛の素晴らしさを教えてやろうぜ!」

 メンバー全員が結城川の拳に手を乗せた。脱落者は一人もいなかった。

 やがてメンバーがそれぞれの立ち位置に散り、機械に強い企画系女優、でんきこうりえがチェックすると、幸い機材は死んでおらず、すぐに大音量のバックミュージックが流れ始めた。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ