プロローグ
どうしてこうなった……
「はぁ……はぁ……ッ!」
こうなるハズでは無かった。
見込みが甘かった。
「……ぐっ!」
身体全体の感覚が遠のき、ついには意識すら薄れ始める。
「ダメだ……まだ……」
崩し掛けた体勢を立て直し、なんとか倒れるのを防ぐ。
しかし状況は相変わらずだ。
辺りを見回す。
そこにあるのは多くの死、そして恐怖……
そんなものが渦巻く中心に私は立っていた。
鳴り響く剣戟、鎧の壊れる音、そして今まさに命を散らせる者の断末魔。
近くにあるはずなのに何だか遠くに聞こえる。
まるで他人事のようなその風景を私は静かに見つめていた。
不思議と恐怖心は無かった。
ただそれは、そんな事を考える余裕が無かっただけなのかもしれない。
「……ッ! ……ッ!」
ふと視界の中に一人の女性が目に入った。
目の前の女性が私に向かって叫んでいるようだ。
しかしその声も周りの音にかき消される。
何だ? 何を言っている?
一体何を──
次の瞬間、激しい衝撃が私の身体に伝わる。
だが痛みは感じない。
唯一理解できたのは己の身体が宙を舞ったことだけだ。
「がはァ!」
壁に激しく打ち付けられ表情が歪む。
何とか立ち上がろうとするも、今度は明確に全身に痛みが走る。
何度も何度も倒れ、それでも何とか立ち上がり前を向く。
「……」
目の前にあるのは強大な絶望。
つい脚がガクガクと震えてしまう。
ただそれは恐怖からきたものなのか、それとも焦燥からきたものなのかは自分でも理解できなかった。
「まだだ……」
そんな事はどうだっていい……私は──
「──まだ……諦めない!!」
◇◆◇
全てが自分の望むままに実現する。
そんな力を手に入れた時、人は何を望むだろうか?
巨額の富?
揺るぎない名声?
それとも絶大なる力?
もちろん全てを手に入れる……なんて答える人も居るだろう。
自分は今に満足しているから他には何も要らない……そう答える人だって居るはずだ。
何故そこまで答えがバラバラなのか。
それはきっと境遇や思想の違いからくるものだと思う。
では私なら何を望む?
今の私なら何を──