朱雀さんの愛情表現99
それから姫の店の工事は着々と進み、開店の日を迎えた。
壁紙を変えて明るくし、観葉植物をたくさん置いた店内は
暗く陰気な、船着き場ではオアシスのようだ。
問題は、治安の悪さだが、元に戻った美しい姫がきゅっと顎をひいて
紫がかった薄ら青い底の知れないすんだ瞳を向けただけで騒いでいたものも黙って見とれてしまうし、
頼みもしないボデイガードもたくさんできた。
もちろん料理も素晴らしいので、最初はむっりとしていたものも
たすきのかかった姫の腕が、ほとんど、なにかするか心づいていないようでいて魔法のような速さで
しなやかな指が動き、間違いなく今まで食べた中で、最高の料理が運ばれてきてしまうと
何もかも忘れてしまうらしかった。
なので料金のシステムはほとんど変わっていない
地獄の管理者の者も何人かは気付いているらしいが、見て見ぬふりをしていてくれるようだ。
給仕には、身のこなしの優雅で、きれいな顔立ちの猫目美少女と美少年がきびきびと働いて華やかだが
柔らかい動きのせいか足音がしない。
店内は静寂さに満たされている。
みんなが食べることに、集中しているからだ
時々、屋根の上をスズメが低くバラバラとすぎていく音だけがする。