朱雀さんの愛情表現97
「私にもちょっと用があるんだ、あんたはあの子を助けてあげな」
朱雀が白虎を見た。
その目にはもう不安はなく、美しく、かわいらしい
まっすぐに、少しも迷っていなくて、信頼の全てをまなざしに込めて自分を見ている。
本当にかわいらしく美しいと思って白虎も少し見とれた。
大股に歩いてしばりつけられた糸を切ってやると、
朱雀は壁をとんと蹴って胸に飛び込んできた。
今まで、朱雀は、自分の役目を果たすことだけを考えてきた。
だが白虎の男性的な体に触れて、すっぽりと包まれると今までになかった安心感を感じた。
「ありがとう、白虎殿」やっとそれだけいうともっと安心した。
白虎は朱雀の体を、抱き上げて、まわりに聞こえないように、こっそりと耳元で言った。
「なあ、お前にはわしにない力があるし、戦闘の経験も長い
それでも、手におえないときもあるだろう
その時は、呼んでくれ、守るなんて言わないから袖を少し引いてくれたらいいんじゃ」
朱雀のプライドを、傷つけないように気を使ってくれているのがよく分かった
感謝の言葉は、のどが詰まって、塩辛くなってわからなくなってしまった
朱雀は、ただうなづくのが精いっぱいだった。