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朱雀さんの愛情表現96
蜘蛛は、動きが速かった。
白虎はぐっと、ぎりぎり迄、腰を落として思い切り下段に刀を落とした。
朱雀が始めて、見るかまえでその先の動きもそうだった
だが、朱雀は白虎の剣は一撃で決まると確信した。
今までと、気迫が違う。
突進してきた蜘蛛の速さに乗って、いつもの力強い動きではなく、風のようにしなやかに
どんと踏み込んだ。
その刀は蜘蛛の胴体を貫き通した。
白虎は太刀先を使わず
間会いを、身の一部として紙一重で見切ったのだ。
蜘蛛は叫ばなかった。
声さえ出さなかったが、 へなへなと床に崩れて、動かなくなった。
床に落ちた頭だけがまだ動いている。
白虎は刀を抜かなかった、そうすれば毒液が飛び散ることもない。
もう一刀でとどめを刺そうとしたとき
「待っておくれ」
と声がして 雪礫姫が入ってきた。