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朱雀さんの愛情表現93
相手は執拗で、朱雀の内心の闘志を少しずつくすぶらせていた。
足は切っても切ってもまた生えて来る。
自分の息が切れるのを感じ、腕が重くなるのを感じているうちに自尊心などどこかに行ってしまった。
また、足がのびてきて払うと同時に、腕に何か巻き付くのを感じた。
それは、たちまち両腕を締め上げて、すさまじい勢いでひぱっられ朱雀は壁にたたきつけられた。
叩き付けられる瞬間、とっさに刀を後ろに向けたので刀は木の壁に刺さり衝撃は防げたが
身動きができない。
相手はゆっくりと確実に近寄ってくる。
その時浮かんだのは、白虎の姿でいつものように優しく笑って自分を見ている。
すると、恋しく、いとおしい情があがって、それだけで胸がいっぱいになって
朱雀の唇がわなないて勝手に言葉が出た。
「白虎殿」
最初は、小さかった声が大きくなる。
「白虎殿、白虎殿、白虎殿」
最後は悲鳴に近い、魂消えのような絶叫になった。