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朱雀さんの愛情表現90
「 まあおあがり」つぶれていたと思った眼が大きくなった。
双眼が赤い。
少しづつ近づいてくる。
「もう一度言います 姫からとったものを返してください」
朱雀は言った。
「あんたはわしが何者か知っていて来たのかね?」
「いいえ」
「あきらめるべきだな、後悔しないように行動しないといけない」
「私は、あきらめて行動しないことのほうの後悔がきらいで出来ないんです」
朱雀がまっすぐ相手を見て言った。
「そうかい」
男が振り向いた。
今は、双眼が真っ赤に光っていた。
一線を越えたな、その目が言っているような気がした。
朱雀には意味のないたわごとに聞こえた。
最初から話し合いなど無意味だったのはわかった。
話しかけたのは少しは相手が何者かわかるかと思ったからだ。
少し半身を落とし刀のツバを切った。