清明様の憂鬱 朱雀さんの愛情表現82
婆様が印を結んで白虎の縄がとかれると同時に、手を伸ばし、手に触れた銃口をつかんだ
そしてくるっとひっくり返して車の後方のガラスに力任せにたたきつけた。
派手な音がしてガラスは粉々に砕け後方に飛んで行った。
婆様が素早く結界を一瞬切ってガラスが飛んで行くのを確認してまた結界を張った。
車は相当なスピードが出ているがもう慣れ切った婆様は見事に車を操っている
「朱雀、戻れ」白虎が怒鳴った。
「はい」朱雀は普段と違う白虎の声に気が付いてすとんと飛び降りて車内に戻った。
白虎は怒りが体に充満している。
それでも考えることができる。
今やるべきことを迅速かつ的確に、白虎はライフルから散弾銃に持ち替えて
片っ端から打ち込んだ。
それは正確で破壊力があり敵が次々に倒れた
降りてきた朱雀がすぐに並んでショットガンを打ちだした
白虎の集中力は途切れることがなかった。
数分後には周りに、敵が見えなくなってきた。
婆様がスピードを徐々にゆるめだした。
朱雀が息をついたのがわかった。
白虎は手を伸ばして髪をなでてやるとその手の上に自分の手を重ねて体をすり寄せてきた
振り返るとその目にはいつものわがままな気配が消えて感謝さえ浮かんでいるように見えた
ので白虎はまたかけがえのない愛しさを感じ猫をかわいがるようにその頬を撫でたが
その直後何かの気配を感じて周りを見渡した。
「おや、こんなところに」と言って婆様が結界をとくと、生い茂った木の間から白い塊のようなもの
がしゅっと飛びこんできた。
それがぼんやりとした人の姿になり葛の葉になって言った
「ああ助かりました」
「まったく面倒をかけるんじゃないよ」と言って結界を閉じた
白虎が婆様の体が少し大きくなっているのに気付いたのはそのときだった、横でそっと朱雀が
目をぬぐったのも・・・・・
それからいろいろな、疑問がわいてきたが、婆様が先にしゃべりだした
「葛の葉、お前どこにいたんだい?」
「まあ途中まではこれたんですが、やっぱり立ち往生してしまいましてね、見つからないように隠れ
ていたんですわ、申し訳ございません」
「体はどうしたんだ」平静を装った朱雀が言った。
「清明様に預けてきた、それから朱雀あの人がいたぞ」葛の葉が言った
「あの人って?」白虎が言うと「前任の白虎殿ですわ」屑の葉が言った。